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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

過失相殺・損益相殺・消滅時効

過失相殺の基本−過失相殺の基準表は絶対ではない

○過失相殺基準については東京地方裁判所の裁判官の作成した基準(別冊判例タイムズ「民事交通訴訟における過失相殺等の認定基準」)を始め、青本、赤本、更に各種交通事故解説書等に記載されていますが、その内容は微妙に異なり、これが絶対的決め手となるものはありません。

○現実発生する交通事故は千差万別で各種基準にピッタリ当てはまるものは殆ど無く、基準は確かに参考にはなりますが、絶対的解決基準にはなりません。似たようなケースであっても道路状況、時間帯、道路の混み具合、特に現場の見通しの状況等は事案によって異なり、実際現場を見なければその違いを実感出来ません。

○従って過失割合が争いになる事案では、事故が起きたと同じ時間帯に、実際の事故現場に行って、道路の見通し状況、道路の混み具合、周辺の状況、被害者が歩行者や自転車の場合、事故時と同様の服装にして、出来る限り事故時と同じ状況で、事故状況を推察して、デジカメだけでなくビデオに状況を記録する必要があります。紙に記録された事故状況だけで或いは事故現場写真だけでの過失割合推測は極めて危険です。

○過失割合認定についての一般原則は次の通りです。
■弱者優先
大型車より小型車、小型車より二輪車、二輪車より自転車、自転車より歩行者、成人より児童がそれぞれ過失の認定が甘い
■広路優先
広い道路を走行してきた車の方が狭い道路を走行した来た車に優先
■左方優先
他に優劣を定められないときは左方車が優先


○過失相殺について民法第722条2項は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定されており、過失相殺をするかどうかは裁判官の自由裁量です。

○過失相殺制度は、公平の理念に基づくものであり、例えば被害者が幼児であっても突然飛び出し等過失があれば考慮されます。過失を認定するには被害者の責任能力は不要で、昭和39年6月24日最高裁判決は事理を弁識する知能があればよいとしますが、現在の判例の傾向は、事理弁識能力も不要で行為自体を判断すれば足りると言うものもあります。しかし被害者が2,3歳の幼児の場合は、被害者側の過失として不公平を是正する考えがありますが、後日、説明します。