○示談代行制度の問題点についてこれまで記載してきたことを取り敢えずまとめると以下の通りです。
(1)示談代行付き保険の発売は、昭和47年に損保協会が企画し、弁護士法72条抵触問題をクリアするため、日弁連と協議し、日弁連との間で概要以下の合意の上、昭和49年3月から発売された。
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被害者の保険会社への直接請求を認め、保険会社自身の法律事務として示談代行を認める。
A被害者との折衝は保険会社正規常勤職員に限定し
その資質の向上を図る。
(2)示談代行付き保険発売の結果、交通事故賠償問題について示談代行制度が確立し、被害者の加害者との損害賠償交渉について弁護士への相談や依頼が激減し、昭和40年代までは交通事故事件が弁護士の重要業務で相当の割合を占めていたものが、昭和50年代になると交通事故訴訟事件も激減し、弁護士の業務の中で交通事故事件はその割合を著しく低下させ、弁護士が交通事故事件から閉め出されれる結果を招いた。
(3)日弁連と損保協会との合意で示談代行サービス付自動車保険発売と引換に交通事故裁定委員会の設立され、昭和49年2月業務を開始し、昭和53年3月15日
財団法人交通事故紛争処理センター(紛セ)に引き継がれ、一方昭和42年9月設立の日弁連財団法人
日弁連交通事故相談センター(交通事故相談センター)が当初は交通事故裁定委員会の役割を果たす予定で「相談の延長としてなす示談あっ旋」まで業務を拡張することを決定したが、当時の日弁連内部の混乱で保留となり、紛セの設立を招き、紛セに比較し交通事故相談センターのあっ旋機関としての地位は低下した。
(4)示談代行制度適用要件は先ず被害者(請求者)の同意が必要で、保険約款も「
『損害賠償請求権者(被害者)が、当会社と直接、折衝することに同意しない場合』には『当会社の費用により、被保険者の同意を得て、被保険者のために、折衝、示談または調停もしくは訴訟の手続(弁護士費用を含みます。)を行います。』との規定は適用しません」と明示されているにも拘わらず、実務はこれを無視し、当然の如く運用されている。
(5)平成11年11月、日弁連
業務改革委員会が行った全国の弁護士対象示談代行制度運用実態アンケートの結果、
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「もし損保会社の社員等が示談代行することに反対であれば、示談代行はしない」との説明は殆どなされていないこと
A
損害賠償金額は、損保提案額と弁護士介入後の最終獲得額に相当の差があること即ち示談代行制度では裁判基準による適正な損害賠償金が支払われていないこと
B
被害者が示談代行員から「弁護士を依頼すると費用が高くついて損をする」と説明されていた例が大変多いこと
が明らかになったにも拘わらず、その後日弁連は損保協会を相手に示談代行制度弊害除去のための活動をしてこなかった。
○そこで私は示談代行制度設立当初の趣旨に立ち返り、当時日弁連と損保協会で合意した
@被害者との折衝は保険会社正規常勤職員に限定しその資質の向上を図ること
A被害者の保険会社への直接請求権を約款に明記すること
の実現を徹底するため、
@弁護士費用が高くつき却って損をすると言うような弁護士業務妨害的言動の禁止
A示談代行制度はあくまで被害者の同意を要件とすることの説明の徹底
を図ることを日弁連として損保協会に申し入れその実現のため協議の場を設けることを提言すべきと思っております。