無保険者傷害担保特約−同居の親族まで適用
○無保険者傷害担保特約についての話を続けます。具体的事例として歩行中のAさんが、Bさん運転車両に衝突されて死亡し、その損害額が8000万円に達しましたが、Bさん運転車両には自賠責保険だけで任意保険がついておらずAさんの相続人Cさんは自賠責保険金3000万円を受領するも、損害額3000万円との差額5000万円についてBさんから回収できない場合を上げます。
○Bさんは、若年で財産がなく且つ死亡事故の刑事事件で実刑判決を受け刑務所に行った場合などBさん自身からは全く回収が出来ません。この場合、AさんがCさんの妻或いは未婚の子であった場合は、無条件にCさんの任意保険の無保険者傷害担保特約が適用になりその保険会社に請求できます。
○私が扱った例で問題になったのはAさんがCさんの父に当たった場合です。息子Cさんの父Aさんが、関東地方のある県で交通事故に遭い死亡しましたが、加害車両が任意保険未加入で自賠責保険金を超える損害を回収する方法を相談されました。
○私は直ちにCさん自身の任意保険と無保険者傷害担保特約に入っていることを確認し、Cさん加入の任意保険会社に自賠責保険金との差額を請求しました。Cさんと同居している親族の死亡または後遺障害による損害も無保険者傷害担保特約の対象になるからです。
○しかし残念ながら保険会社からは無保険者傷害担保特約不適用で保険金支払は出来ないとの回答が来ました。Cさんの住所地が仙台なのにAさんの事故地が関東地方だったため保険会社でAさんの住民票を取り寄せAさんが関東地方に住民登録をしていることを調査したからでした。
○AさんはCさんと同居していたのですが、たまたま事故時の3ヶ月前から関東地方に出稼ぎに出て社会保険等の関係で住民票も関東地方の移していました。Cさんとしては一時の出稼ぎであったためAさんとは同居が続いていると思っていましたが、保険会社は事故時点では別居中で且つ住民票移動までしているところから「同居」とは認められないと主張し、これを覆すことは困難と判断して無保険者傷害担保特約適用は諦めざるを得ませんでした。
○しかし加害車両の保有者が加害者の母親で自宅等の財産があったため加害者とその母に対し訴えを提起し、母から自賠責保険金との差額の内の相当額は回収しました。
○無保険者傷害担保特約は、被保険者の同居の親族まで適用になり、同居していれば叔父叔母従兄弟、又従兄弟まで適用になりますので、無保険自動車による死亡・後遺障害事案ではこの特約に注意する必要があります。