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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

離婚要件

未成熟子2名一審棄却・控訴審認容有責配偶者離婚請求事件のまとめと感想

○一審平成18年8月30日大阪家裁判決(判タ1251号316頁)で請求棄却でしたが、控訴審平成19年5月15日大阪高裁判決(判タ1251号312頁)で離婚が認容された有責配偶者離婚請求事件について、私は控訴審の結論が極めて妥当と考えていますが、その内容について検討します。

○事案概要は次の通りです。
・平成19年現在有責配偶者夫(原告・控訴人)と妻(被告・被控訴人)は、共に46歳で,昭和61年2月婚姻届出
・夫婦の間には,長男(18歳),二男(16歳)がいる
・夫は、平成2年9月から,他の女性と男女の関係を持ち,平成6年5月に自宅を出て別居状態
・夫は、平成11年7月から,夫所有の広島市内のマンションで他の女性と同居し、平成19年現在同居継続
・夫は、妻に対し、平成5年12月,平成12年6月、平成13年7月に離婚調停を3回申し立て,平成14年1月に1回目の離婚訴訟提起
・平成5年の離婚調停で、婚姻費用として,平成6年7月から別居期間中,毎月20万円及び毎年6月と12月にはそれぞれ18万円を加算した金額を支払うとの調停成立
・平成15年婚姻費用減額請求申立審判で婚姻費用は月額12万6000円に減額(過去には長期間にわたって婚姻費用の支払を遅滞し,そのため,妻らの生活が困窮したこともある)
・1回目離婚訴訟は,平成14年10月,有責配偶者からの離婚請求であることを理由に,請求棄却判決、控訴審も平成15年3月控訴棄却判決
・夫は、平成17年○月、2回目の離婚請求、夫は150万円の慰謝料支払提案をするも、低額すぎ、且つ、財産分与はないと主張したことから、離婚により妻は精神的,社会的,経済的に極めて苛酷な状況になるとして請求棄却
・夫が、控訴


○人事訴訟法附則14条による裁判所法61条の2の改正により,人事訴訟法が施行された平成16年4月1日から,各高等裁判所にも家庭裁判所調査官を置き,家事審判に係る抗告審や人事訴訟の附帯処分や親権者の指定に係る控訴審の審理に必要な調査を掌ることとされ、大阪高裁には,現在2名の家庭裁判所調査官が配属されているとのことですが、控訴審では、この家裁調査官による未成熟子2名の調査が行われました。

○本件では,家裁調査官の調査を、離婚原因の判断、親権者の指定及び養育費算定の基礎とし、子の監護の観点から専門的知見等を活用の必要性を認め、未成熟子がいる有責配偶者の離婚請求を認めるか否かは,妻だけでなく,子の福祉の観点から,離婚によって子が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれるかどうかを将来の見通しも含め慎重に判断したものです。この調査官による調査結果を基礎として有責配偶者の離婚請求の当否を判断した大阪高裁の考え方は,合理的と思われます。

○控訴審での家裁調査官による子らの意向等の事実調査に加えて控訴審で裁判所の和解勧告により以下の一部和解が成立しました。
(1) 本件離婚請求,親権者の指定及び毎月払いの養育料の各申立てについては判決手続による判断を受けるものとする。
(2) 離婚が確定したときは,控訴人は,被控訴人に対し,離婚慰謝料として150万円を直ちに支払う。
(3) 離婚が確定し,被控訴人が二男二郎の親権者に指定されたときは,控訴人は,被控訴人に対し,毎月払いの養育費のほかに,二男が大学に入学する場合には,養育費として別に150万円を二男の大学入学が確定した時点で直ちに支払う。
(4) 本件の合意は,被控訴人の控訴人に対する訴訟,審判手続におけるその余の請求及び申立てを制限するものではない。


○この一部和解により、夫は,妻に対し分与すべき財産が存しないことの確認を求める旨の原審以来の申立てを取り下げて、財産分与・養育費額等については、判決手続で行うこととして、最終的には離婚認容の判決が出されました。別居期間が13年11月余に及び,未成熟子が高校2年生であって3歳の幼少時から一貫して相手方配偶者の監護の下で育てられてまもなく高校を卒業する年齢に達しており,有責配偶者の側も養育に無関心であったものではなく離婚に伴う経済的給付の実現も期待できることから,未成熟子の存在が離婚請求の妨げになるとはいえないとしたもので、妥当な判断と思われます。