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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

判例紹介

平成24年8月9日前橋家裁太田支部審判−子の引渡保全処分1

○「平成24年10月18日東京高裁決定−子の引渡保全処分必要性判断基準1」で紹介した高裁決定の原審である平成24年8月9日前橋家裁太田支部審判(判時2164号59頁)全文を2回に分けて紹介します。
4歳の子供を連れて実家に戻った妻が、夫に子との面会をさせて、夫が夫方に連れ帰り、子が夫方に居たいと言う希望を述べたため妻は数日の予定で宿泊を了解したところ、夫がいつまでも子を妻の元に返さず、夫の両親の協力を得て夫方から保育園に通わせて監護を継続していました。

これに対し、妻がこの監護者の指定と子の引渡を求める審判の申立をすると共に審判前の保全処分としての仮の監護者の指定と子の引渡を求める申立をした第一審が平成24年8月9日前橋家裁太田支部審判であり、子の主たる監護者は、生後一貫して妻であったことを主な理由として、妻を監護者と仮に定め、子を仮に引き渡すことと命じています。

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主文
一 未成年者の監護者を申立人と仮に定める。
二 相手方は、申立人に対し、未成年者を仮に引き渡せ。

理由
第一 申立ての趣旨
主文と同旨

第二 事案の概要
 本件は、申立人が、未成年者を連れて自宅を出て、相手方と別居したところ、相手方から未成年者との自宅宿泊を伴う面会交流を求められ未成年者を相手方に一時的に預け、翌日相手方が連れ戻った未成年者が申立人の実家の玄関先で「パパがよい」と泣きながら言ったためそのまま未成年者を連れ戻ったとして、相手方に対し、未成年者の監護者の指定及びその引渡しを求めた事案である。

第三 当裁判所の判断
一 一件記録によれば、次の事実が認められる。
(1) 申立人(昭和54年○月○日生)と相手方(昭和52年○月○日生)は、平成19年4月28日婚姻し、平成20年○月○日長男A(未成年者)をもうけた。
 申立人は、出産後から未成年者を母乳で育てた。

(2) 申立人と相手方は、相手方住所地に新居を購入し、平成21年2月1日から、未成年者とともにそこで生活をしていた。
 なお、未成年者の養育及び監護について、非番の時等に相手方がすることもあったが、主として申立人が行ってきた。
 平成22年7月24日から同月30日まで及び平成23年2月28日から同年3月2日まで未成年者が入院した間、申立人は、病院につきっきりで未成年者を看病した。

(3) 相手方は、太田市所在のa株式会社において、次のとおり三交代制の勤務をし、基本的には土曜日日曜日は休みである。年収は440万円ほどの見込みである。住宅ローンの残高は2739万7968円で、毎月の返済額は7万2192円で、賞与月は16万7577円である。
 一直(Mシフト) 08:15〜16:40
 二直(Aシフト) 16:15〜00:40
 三直(Nシフト) 00:15〜08:40
 申立人は、○○店において、午前8時30分から午後3時までパート勤務をし、一か月16日ないし21日程度勤務している。一か月8万円程度の収入を得ている。

(4) 申立人は、相手方から一人で行動することにつき束縛されたことや育児方針を異にしたこと等から、相手方に対する信頼や愛情が薄れ、相手方が自己の言動を改めなかったため、我慢の限界を感じた。平成24年4月上旬にパート先で世話になっている人の送別会に参加したい旨相手方に相談したところ、そういうところにいくのはおかしいと反対され、以前から揉めごとが絶えなかったこともあり、平成24年3月27日、離婚届に署名押印したものを置いて、未成年者を連れて申立人の実家に帰り、以後別居している。
 申立人と相手方とは、未成年者を別居期間中は申立人が監護することをお互いに了解した。
 申立人の実家には、申立人の父(60歳)母(58歳)及び兄(35歳)が同居している。

(5) 未成年者は、平成22年5月1日から、b保育園に通園し、平成24年4月から同保育園の三歳児クラスに通っている。申立人と相手方とが別居する以前は未成年者の通園には殆ど申立人が付き添った。
 申立人は、毎朝、未成年者を同保育園に送り、その後○○でアルバイトをし、夕方お迎えの時間に未成年者を迎えに行った。別居後も、平成24年5月25日までの間は送迎はすべて申立人が行っていた。
 平成24年4月21日、相手方は、未成年者と外出を伴う面会をした。

(6) 平成24年5月23日午後8時ころ、相手方は、申立人の実家を訪れ、申立人の父に対し、「申立人の口からきちんとしたことが聞きたい。Aと遊びたい。」と述べた。相手方は、そこで、未成年者と会って抱いた。

(7) 平成24年5月26日正午ころ、相手方は、未成年者と遊ぶ約束をしているからと言って、未成年者を申立人の元から連れ出した。
 相手方は、申立人に対し、電話で、同日夕方、「Aは今寝ているのでまだ帰れない。」と、同日夜、「子供が、『パパがいい、帰りたくない。』と言っている。」と連絡した。これに対し、申立人は、「それなら泊まってきてもよいよ。」と言った。

(8) 平成24年5月27日、何時になっても未成年者が帰ってこないので、申立人の父が相手方に連絡すると、「Aが遊んでいるから帰れないです。」と相手方から言われた。
 同日昼ころ、申立人の父が相手方に「Aを連れてきてください。」というと、少しして、相手方は、未成年者を申立人の実家に連れてきた。その際、未成年者が玄関先で「パパが良い。」と泣きながら言い、相手方も玄関先で涙を流して未成年者を手放さないようにしていた。
 申立人の父は、そんな姿を見て、「1日2日面倒を見てやりなさい。」と声をかけた。
 その後、相手方は、申立人の父に対し、申立人が使用しているデリカを貸して下さいと連絡し、デリカを借りた。
 申立人は、相手方に対するそれまでの恐怖心から、もう未成年者を返してもらえないと思いこみ、タンスに入っている洋服類と未成年者に関わるものを書いて渡した。
 相手方は、未成年者を、相手方の静岡の実家に連れて行った。

(9) 平成24年5月28日から平成24年6月10日まで、未成年者は、b保育園を欠席した。ただし、6月7日の歯科検診には出席した。同月11日以降、同月26日発熱で欠席した以外は、出席した。