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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

判例紹介

平成24年8月9日前橋家裁太田支部審判-子の引渡保全処分2

○「平成24年8月9日前橋家裁太田支部審判-子の引渡保全処分1」の続きです。


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(10) 平成24年5月29日午後6時30分ころ、デリカと相手方の父の車が自宅にきているのを発見して、申立人は、両親とともに、鍵のかかっていなかった自宅の中に入ったところ、相手方から「連絡もしないで何をしにきたんですか。」と言われたので、「Aに会いに来ました。」と言ったところ、相手方から申立人の両親に対し「あなたたちは出て行って下さい。」と言われたため、申立人も相手方の両親に対し「両親を出すのであればあなたの親も出て行ってください。」と言った。
 すると、相手方は、申立人及びその両親に対し、「Aが怯えているじゃないですか。」と言ったので、その後、両親がでて、申立人のみが残った。相手方の父は、申立人に対し、「家の支払はどうするんです。」と言い、「Aは片親になるんですよ。」と言い続けた。

 そこで、申立人は、「私はあなたたちと話に来たのではなくて子供と話に来たんです。」と言った。申立人は、未成年者を4年間ほとんど一人で育ててきたのに、未成年者が「ママ」と言わず、笑顔の一つすら見せなかったことに衝撃を受けた。
 申立人は、自宅から帰る際、荷物がまだあるにもかかわらず、相手方から、「もうだいたいの荷物は持っていったでしょ、家の鍵は返してよ。」と言われたが、まだ荷物が残っていることなどから、鍵を返さないで自宅から申立人の実家に帰った。
 現在、相手方は、両親(父65歳、母63歳)を静岡の実家から呼び、相手方不在のときは未成年者の面倒をみてもらっている。母は、平成24年7月6日まで太田市に滞在していたが、現在一時的に静岡にもどった。

(11) 平成24年6月1日、相手方の代理人弁護士は、申立人に対し、「受任のご連絡」を送付し、直接相手方と連絡をとることを控えるよう求め、未成年者を預かったこと、未成年者が戻りたくないとの意思を有しているので、離婚となった場合には相手方において養育したい旨等を通知した。

(12) 平成24年6月7日、申立人の代理人弁護士は、相手方の代理人弁護士に対し、「受任通知書及び要望書」を送付し、未成年者について面会交流として相手方に預けたに過ぎないこと、未だに返してもらえないこと、相手方が自分で育てるとまでは言っていないこと等から、直ちに未成年者を申立人に引き渡すことを要望した。

(13) 平成24年6月8日、相手方の代理人弁護士は、申立人の代理人弁護士に対し、申立人側の要望には応じられないこと、相手方において離婚調停を申立て、その手続の中で解決を図るべきものと思料している旨回答した。

(14) 平成24年6月14日、申立人は、当裁判所に、本件保全処分を申し立てた。

(15) 平成24年7月9日、当裁判所は、申立人及び相手方について審問した。

二 監護者の指定について
 上記認定事実によれば、未成年者の主たる監護者は、生後一貫して申立人であること、別居期間中の監護者について申立人とすることが申立人及び相手方間で了解されたことが認められ、その監護に支障があったことをうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はない。
 したがって、未成年者の監護者を申立人と仮に定めるのが相当である。

三 子の引渡しについて
 上記認定事実によれば、未成年者の主たる監護者は、生後一貫して申立人であり申立人が殆ど未成年者を養育してきたこと、別居期間中の監護者について申立人とすることが申立人及び相手方間で了解されたこと、未成年者を相手方が申立人から預かったのは面会交流のためであったこと、しかるに相手方は面会交流の目的が終了した後も、未成年者を返すことを拒んでおり、連れ去りに等しい状況にあること、未成年者が四歳と幼く母親による養育を必要としており申立人のもとで養育することが未成年者の福祉にかなうこと、相手方は三交代制の勤務をしているため未成年者を監護養育することは困難であることが認められ、上記面会交流以前に申立人による未成年者の養育に不都合があったことや、未成年者を申立人に返すことにより未成年者の健康が損なわれたり未成年者の福祉に反することをうかがわせる事情を認めるに足りる証拠はない。なお、相手方は未成年者が相手方との生活を望んでいると主張するが、未成年者は4歳と幼くその言動は周囲に影響を受け、自立した自由意思での発言と認めることは困難であり、その言動のみをもって上記認定判断を覆すのは未成年者の福祉の見地からして相当でない。

 また、上記認定事実によれば、未成年者の福祉のため、未成年者を申立人に引き渡す緊急の必要が認められる。
 したがって、相手方は申立人に対し、未成年者を仮に引き渡すべきものである。

四 よって、主文のとおり審判する。