遺産分割
1 遺産分割の手順は
遺産分割を行うにあたっては、その前提として、
@相続人の確定、
A遺産の範囲と評価の確定、
B各相続人の具体的相続分の確定
が必要です。
@相続人の確定にあたっては、被相続人が子供をつくることができる年齢(15才位)以降の 身分関係の変動を確かめられる戸籍謄本、住民票の取り寄せが必要です。それによって認知された 「隠し子」等が分るかもしれません。相続関係説明図の作成は司法書士が専門です。
A遺産の範囲と評価の確定には、固定資産台帳の写し、預貯金証書、有価証券の確認等が必要です。
遺産の評価は、遺産分割時が基準となります。
B具体的相続分の確定は、まず特別受益(前 頁参照、民法903条)分を相続財産に加え、寄与分(前頁参照、民法940条の2)を考慮してなされます。
2 当事者同志の話し合いがつかないときは
まず、家庭裁判所に遺産分割の調停申立をし、調停手続でも話し合いがつかないときは、審判手続に移行します。
審判手続においては、一般事件の裁判官にあたる家事審判官が当事者の主張、証拠資料等を 検討し、一般事件の判決にあたる審判を下します。
審判に不服があれば、一般事件の控訴にあたる即時抗告を高等裁判所に、さらに不服があれば一般事件の上告にあたる特別抗告を最高裁判所に出すことができます。
3 遺産の基準は
遺言があれば、それに従うのが原則ですが、相続人間の協議または調停でそれと異なる分割をしてもかまいません。
遺産分割の基準は、法文では遺産に属する物や権利の種類や性質、各相続人の年齢、職業、 心身の状態、生活状況、その他一切の事情を考慮してなすこととされています。
全てケースバイケースで数学の公式のような明確な基準はありません。
分割方法としては
@現物分割
A代償分割
B換価分割
などがありますが、状況によっては話し合いのついた遺産の一部のみの分割も可能です。
4 相続人が全員そろわないときは
遺産分割協議は相続人全員でしなければならず、1人でも欠けた協議は無効であり、名義変更登記手続はできません。
行方不明の相続人がいる場合は、家庭裁判所に請求して、相続財産管理人を選任してもらって 相続財産管理人を遺産分割協議に参加させます。
行方不明が一定期間続いている場合は、家庭裁判所に請求して、失踪宣告をしてもらえば、 その人は死亡したものとして取り扱われます。
5 相続人や遺産の範囲に争いのあるときは
ある人が相続人であるかどうか、あるいはある土地が遺産に属するかどうか争いがあるときは、 前者で強制認知や親子関係不存在確認の訴、後者では所有権確認の訴などで、地方裁判所での 訴訟の決着がつくまで遺産分割協議は原則としてできません。
但し、遺産については争いのある部分を除いて分割することは可能です。