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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

相続財産

遺産共有と普通共有持分併存ケース平成25年11月29日最高裁判決解説

○「遺産共有と普通共有持分併存ケース平成25年11月29日最高裁判決全文紹介」の続きで私なりの解説です。

先ず事案概要です。
・甲土地240uは、平成18年9月当時,被上告人X1(「被上告会社」)30/72,被上告人X2が39/72、亡Aが3/72の各持分で共有
・Aは,平成18年9月に死亡し、相続人は夫X2、長男X3(「被上告会社」代表)、長女Y1、二男Y2で、遺産分割は未了のため、甲土地は相続人の遺産共有状態
・甲土地上にはX1及びX2が所有する建物が存在し、本件持分に相当する面積は約10uにすぎず,本件土地を現物で分割することは不可能
・夫X2、長男X3は甲土地にマンション建築計画するも、長女Y1、二男Y2の反対で甲土地分割協議不調で、本件訴え提起
・Xらは,本件土地の分割方法として,本件持分をX1会社が取得し,X1がAの共同相続人らに対し本件持分の価格の賠償として466万4660円を支払うという全面的価格賠償の方法による分割を希望し、原審は,この希望を認める判決
・Yらは,本件持分について全面的価格賠償の方法による共有物分割がされると,賠償金が確定的に各相続人に支払われてしまい,遺産分割の対象として確保されなくなるとして,本件において全面的価格賠償の方法を採用することは許されないと主張し上告


○最高裁判決概要は以下の通りです。
・共有物について,遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分と他の共有持分とが併存する場合に,共有者(遺産共有持分権者を含む。)が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟(昭和50年11月7日最高裁判決、民集29巻10号1525頁)
・共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与された財産は遺産分割の対象となり,この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべき
・遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分(遺産共有持分)と他の共有持分が併存する共有物について,遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ,その者に遺産共有持分の価格を賠償させる方法による分割の判決がされた場合には,賠償金の支払を受けた遺産共有持分権者は,これをその時点で確定的に取得するものではなく,遺産分割されるまでの間これを保管する義務を負う
・民法258条に基づく共有物分割訴訟は,非訟事件であって,裁判所は,価賠償の方法による分割の判決をする場合には,その判決において,各遺産共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で,遺産共有持分を取得する者に対し,各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができる


○「遺産不動産の共有登記と共有物分割訴訟の注意点」記載の通り、共同相続人の一人が,遺産である特定不動産の共有持分権を第三者に譲渡した場合に,その第三者は遺産分割前にその特定財産について民258条に基づく共有物分割を請求できます(昭和50年11月7日最高裁判決、民集29巻10号1525頁、最判昭和53年7月13日最高裁判決、判時908号41頁)。本件は,共同相続人による特定不動産の共有持分の譲渡があった場合と,共有物について,遺産共有持分と他の共有持分が併存する状態が生じている点において共通していることから、この場合における共有関係の解消は共有物分割請求によることを明らかにしたものです。
 共有物分割の判決により遺産共有持分権者に分与された金銭は,民907条の遺産分割の対象となりますが、遺産たる可分債権当然分割説(昭和29年4月8日最高裁判決、民集8巻4号819頁)との整合性が気になるところです。