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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

遺産分割

遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は3

○「遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は2」を続けます。
遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は」の末尾に「平成16年4月20日最高裁判決(判時1859号61頁、判タ1151号294頁等)によれば、7000万円の預貯金債権について、特別受益持戻によりBの取得分は2000万円を超える部分は権限がなくなっているの権限なく払い戻したとして不法行為に基づく損害賠償又は不当利得としてCがBに対し地裁に訴えを提起して請求することになりそうです。」と記載していましたが、「※と記載していましたが、その後色々判例・文献を調べるとこの結論は保留とします。」と追加しました。

○それは、平成12年2月24日最高裁判決(判時1703号137頁、判タ1025号125頁、民集54巻2号523頁)の精査の結果です。

主文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。 
 
理由
 上告代理人○○の上告受理申立て理由(ただし、排除されたものを除く。)について
 民法903条1項は、共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分又は指定相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し、その残額をもって右共同相続人の相続分(以下「具体的相続分」という。)とする旨を規定している。具体的相続分は、このように遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって、それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず、遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり、右のような事件を離れて、これのみを別個独立に判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない。
 したがって、共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法であると解すべきである。
 以上によれば、上告人の本件訴えを却下すべきものとした原審の判断は、是認することができる。右判断は、所論引用の判例に抵触するものではない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものであって、採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官遠藤光男 裁判官小野幹雄 裁判官井嶋一友 裁判官藤井正雄 裁判官大出峻郎)


○民法899条「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」との「相続分」について、相続人の相続分は、先ず900条で法定相続分が規定され、次に903条で特別受益者の相続分、904条の2で寄与分の各定めがあり、900条の法定相続分に対し、903条や904条の2で修正を加えられた最終の相続分は講学上「具体的相続分」と呼ばれ、その性質について、
@実体的権利関係とみる相続分説又は訴訟事項説(山崎賢一「具体的相続分は「相続分」か「遺産分割分」か」ジュリ697号130頁、梶村太市「遺産分割と特別受益」家事審判事件の研究(2)64頁等)
A遺産分割の基準にすぎないとみる遺産分割分説又は審判事項説(安部正三「具体的相続分に関する争い」新版相続法の基礎157頁、田中恒朗「遺産分割の前提問題―訴訟と審判の交錯―」判例タイムズ321号30頁、同「遺産分割の前提問題と民事訴訟(下)」ジュリ609号124頁等)
の対立がありました。

○前記最高裁判決の「具体的相続分は、このように遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって、それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず、遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり、右のような事件を離れて、これのみを別個独立に判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない。」とは、A遺産分割分説又は審判事項説の採用を明らかにしたものです。

○だとすると遺産が可分債権のみの場合、特別受益によって修正された具体的相続分は、実体法上の権利関係ではなくなり、「遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は」記載の「7000万円の預貯金債権について、特別受益持戻によりBの取得分は2000万円を超える部分は権限がなくなっているの権限なく払い戻したとして不法行為に基づく損害賠償又は不当利得との法律構成は出来なくなります。
 この問題についての最終結論は、「遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は5」に記載します。