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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

遺言書

清算型遺言に係る登記のまとめ

○「謹告!遺言執行者による遺産売却と移転登記は可能」に記載したとおり、「次の不動産は、これを売却して、売却代金から諸経費を差し引いた残金額を、Bに4分の3、Cに4分の1の割合で相続させる。この売却、売却代金の分配等の手続は遺言執行者Eが行う。」との遺言によって遺言執行者EがFに売却処分し、相続人の協力無くしても遺言執行者だけでFへの売却による所有権移転登記が出来ます。

○このように遺産の全部または一部を遺言執行者が売却処分してその売却金を相続人等に遺贈するとの遺言例を清算型遺言と言います。不動産を処分する清算型遺言によっても不動産の相続登記及び売買による所有権移転登記は、相続人の協力がなければ出来ないのではと長年疑問を持ってきましたが、登記実務では相続人の協力無くして出来ることを明言しておりました。

○その理屈を整理します。
@被相続人Aの遺言によって遺言執行者Eに不動産の売却権限が与えられても遺言の効力が発生するのはA死亡後ですから、不動産所有権は相続によって相続人B・Cに移転します。
Aそこで不動産の売却権限を与えられた遺言執行者Eはその準備行為として、相続人B、Cの代理人として単独申請により相続を原因として不動産の所有名義をB・Cへ移転登記手続をすることが出来ます。
B次に遺言執行者Eは、被相続人Aから遺言書によって与えられた売却権限に基づき、不動産所有者B、Cの代理人として不動産をFに売却することが出来ます。
Cこの売却による登記は、登記権利者を買受人F、登記義務者を相続人B・Cとして、B・Cの代理人としての遺言執行者Eと買受人Fの共同申請により行います。この時の代理権限証明情報は遺言書であり、登記原因証明情報は相続人B・C代理人としての遺言執行者Eと買受人Fの売買契約書です。
D登記義務者の印鑑証明書は相続人B・Cではなく、遺言執行者Eの印鑑証明書で足り、相続人B・Cの印鑑証明書は不要であり、結論として、相続人B・Cの協力無くして、遺言執行者Eは、遺言書に従って不動産売却処分が出来ます。

○以上の理屈は、日本加除出版株式会社発行「設問解説実務家のための相続法と登記」259頁にも「いわゆる清算型遺言による登記」との表題で解説されています。この書籍では出典としては、質疑応答・登研476号139頁を掲載しています。

○なお相続人のいない遺言者が清算型遺言を残して死亡した場合に遺言執行者が指定されているときは、相続財産管理人を選任するまでもなく、遺言執行者が相続財産法人名義とする登記をした上で、遺言執行者と買受人との共同申請により売買による所有権移転登記を申請することが出来ます(質疑応答・登研619号219頁)