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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

相続人

相続人をやめさせたいとき−相続人廃除の基本1

○民法892条で「遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。」と規定し、被相続人の意思で推定相続人(殆どの場合は子)の相続資格を奪うことが認められています。

○親に迷惑をかけ続け財産は一切やりたくない子Aが居て、他の子Bに全て相続させるとの遺言書を書いたとしてもAは遺留分という権利があり自己の法定相続分の2分の1は確保できることになっています。相続人廃除が家庭裁判所で認められると排除された者は相続人でなくなりますので当然遺留分もなくなります。

○相続人廃除の要件は@被相続人に対する虐待・重大な侮辱又はA推定相続人自身の重大な非行であり、家庭裁判所に請求してその審判があって初めて認められます。遺言で相続人廃除の申立をすることができ、この場合、遺言執行者が家庭裁判所に相続人廃除の申立をします。

○虐待や侮辱は判例では被相続人に対し精神的苦痛を与え、または名誉毀損する行為であってそれにより被相続人と当該相続人との家族的共同生活関係が破壊されその修復を著しく困難にするものとされています(東京高決平成4.2.11判時1448号130頁)。

○この東京高裁決定の事案はA夫婦の二女Bは小学時代から窃盗家出等の問題行動を繰り返し矯正のため中学はスイス寄宿学校に入れるも問題行動で退学させられその後も問題行動を続けて中等少年院送りとなり更に退所後もA夫婦の元には帰らず没交渉となり暴力団幹部Cと結婚したがCが組を辞めBと共に故郷に戻り結婚式を挙げるためA夫婦に無断でAとCの父の連名で披露宴招待状を印刷して配付したことについてAは重大な侮辱として相続人廃除の申立をしたものです。

○原審ではBの非行についてA夫婦にも責任の一端がありBの夫Cは暴力団を脱退してトラック運転手として働いていることなどを考慮してA夫婦の相続人廃除の申立を却下していますが、高裁ではA夫婦はBの矯正のため最善の努力していたこと、Bが元暴力団員と結婚しこれをA夫婦の知人にも公表したこと、Bに改心の意思もなくA夫夫婦に宥恕の意思も認められないことから相続人廃除の申立を理由があるとして認めました。

○まだ判決文を精読しておりませんが、微妙な事案と思われA夫婦とBの親子関係に興味が湧きました。