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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

遺留分

寄与分の優先性−寄与分は遺留分に勝つ

○相続の難しい話が続き恐縮ですが、H17-11-18更新情報で「私の考えとしては、離婚の場合財産分与請求できる範囲で寄与分を認め、寄与分を遺言書に優先させるべきと思います」と記載しましたが、これは誤りでした。

寄与分とは、民法相続法では昭和55年改正で新設されましたが、相続実務ではそれ以前から採用されていた考え方で、簡単に言えば被相続人の財産形成に貢献した相続人が居る場合、公平相続の観点からその貢献分について法定相続分とは別に特別の取り分を認めるものです。

○例えば父Aと母Bが一緒に商売を継続して財産をA名義で形成してきた場合、Aが病弱で実質はBの経営であった場合などはAの財産形成にBの寄与分が認められます。具体的にはA名義で1億円の遺産を残し、相続人が妻B、長男C、長女Dであった場合、法定相続分はBが2分の1の5000万円、C、Dは各4分の1の各2500万円です。

○しかしBの貢献について寄与分2分の1と認定された場合、先ずBは寄与分2分の1の5000万円を取得し、残り5000万円について法定相続分でBが2分の1の2500万円、C、Dは各4分の1の各1250万円となり、結局Bは寄与分と法定相続分合わせて7500万円を取得します。

○このケースでAは名目だけ殆どBの働きでA名義財産を形成した場合などは、Bの寄与分が、8割の5分の4まで認めることが出来るでしょうか。Bの寄与分を5分の4まで認めると、C、Dの取得分は5分の1しか残らず、C、Dの遺留分合計4分の1を侵害することになります。

○これは寄与分と遺留分の優先性の問題ですが、結論は「寄与分は遺留分に勝つ」でC、DはBの寄与分に対し、遺留分減殺を請求することは出来ません。「寄与分は遺留分に勝つ」理由は、色々ありますが、要は寄与分の目的である相続人間の公平実現を重視したものです。

○上記ケースで、Aが老後になって若い愛人Eに狂い婚外子Fを認知し、全財産をFに遺贈するとの遺言を残して亡くなった場合、BはFに対しどのような請求が出来るでしょうか。

○認知されたFはAの共同相続人の一人となり、法定相続分は妻B2分の1、子C、D、Fは各6分の1になります。遺留分として2分の1がありますので、妻Bは4分の1の2500万円、C・D・Eは各12分の1の各約833万円を遺留分減殺請求によって返還請求できますが、問題は本来の遺産分割ではBに認められるべき5分の4の寄与分相当額です(この話題後日に続けます)。