自賠責保険の基本
交通事故の損害賠償に保険はつきものです。
以下、自賠責保険と任意保険に分けて知っておくとためになる点を簡単に説明します。
1.自賠責保険
ⅰ) 強制保険、下積み保険の意味
自賠法(自動車損害賠償保険法)に基づき自動車を使用する者は、加入が義務付られている保険です。義務違反者は6ヶ月以下の懲役もしくは5万円以下の罰金を科せられます。
自賠責保険は最低保障を目的とした下積み保険であり、任意保険は自賠責保険の不足分を補うためのみの上積み保険です。任意保険しか加入していない自動車事故の場合自賠責保険の下積み部分は任意保険からは出ません。この場合は政府保障事業による損害填補の請求が出来ます。
ⅱ) 対人賠償のみ・査定は機械的・金額は限度あり
自賠責保険は人損のみで、物損は対象になりません。又、損害額の査定は自算会(自動車保険料率算定会)調査事務所で一定の基準に基づき機械的になされ、保険金額には上限があり、傷害は120万円、後遺障害は等級に応じた金額(次表参照)、死亡は3,000万円が上限です。
自賠責保険金額の推移は次表のとおりです。
ⅲ) 被害者請求制度
加害者の支払いが遅れている場合、自賠法16条により、被害者が直接自賠責保険会社に請求ができます(被害者請求の時効は3年であることに注意)。
被害者請求には、①本請求(損害が一応確定した段階)、②内払請求、③仮渡金請求(定められた金額が迅速に支払われる)があります。
ⅳ) 自賠責保険の有利な点は
①被害者救済の政策目的のため、過失相殺の適用が極めて緩やかです。死亡事故でも最高5割までしか過失による減額を認めないので、被害者に重大な過失がある死亡事故の場合、任意保険より自賠責保険の方が有利な場合があります。
②加害者が故意の事故の場合でも、被害者請求はできます。
③被害者が妻などの親族の場合でも、任意保険金は一般には支払われませんが、自賠責保険金は支払われます。
ⅴ) 政府補償事業
自賠責保険のついていない自動車事故や、ひき逃げ事故等で加害車両の自賠責保険が不明の場合は、いずれかの保険会社(どこでもよい)を通じて政府(運輸省)に政府保障事業による損害填補の請求ができます。
損害査定は自賠責保険に準じて行われますが、被害者の過失は自賠責保険より厳しく認定されます。