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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

休業損害逸失利益

咀嚼障害を含む併合9級後遺障害の労働能力喪失率認定判例紹介2

○「咀嚼障害を含む併合9級後遺障害の労働能力喪失率認定判例紹介」を続けます。
51歳男子郵便局外交員の併合9級逸失利益算定につき、「事故により退職を余儀なくされた」等から、60歳までは「年200万円の減収があった」とし、67歳まではセンサス同年齢の27%の労働能力喪失による逸失利益を認めた平成17年6月24日大阪高裁判決(自動車保険ジャーナル・第1609号)を紹介します。

○その第一審平成17年2月8日大阪地裁判決(自動車保険ジャーナル・第1609号)判決でも、そしゃく障害等で同僚に迷惑をかけると退職した郵便局外交員は「本件事故により退職を余儀なくされた」結果、保険代理店で稼働するが、250万円以上減収となっている等から、60歳までは「200万円の減収があった」とし、67歳まではセンサス同年齢を基礎に「労働能力に及ぼす影響を勘案」し、「27%程度の労働能力を喪失した」と認定したを紹介します。

○第一審・控訴審いずれも逸失利益の考え方は同じですが、過失割合について、一審「原告40%、被告乙山60%」を控訴審「被控訴人50%、控訴人乙山50%」と、原告の過失割合が10%大きく認定されたため、一審認容額845万6259円が、控訴審では564万7397円に減額されています。

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平成17年6月24日大阪高裁判決

主   文

1 本件控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
2 控訴人(附帯被控訴人)らは、被控訴人(附帯控訴人)に対し、連帯して564万7397円及びこれに対する平成12年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人(附帯控訴人)のその余の各請求をいずれも棄却する。
4 本件附帯控訴を棄却する。
5 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを5分し、その1を控訴人(附帯被控訴人)らの負担とし、その余を被控訴人(附帯控訴人)の負担とする。
6 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判


    (中略)

第三 当裁判所の判断
1 当裁判所は、被控訴人の本訴請求は主文第2項の限度で理由があるから、その限度で認容し、その余の請求は失当として、これを棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」中、「第三 争点に対する判断」欄(原判決6頁3行目から同12頁21行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。

    (中略)

(3) 同7頁3行目の「双方の過失割合」を「控訴人乙山の過失の有無、及びこれが肯定された場合の双方の過失割合」と、同8行目の「かなり大きい」を「決して少なくない」と、同14行目から同15行目にかけての「原告40%、被告乙山60%」を「被控訴人50%、控訴人乙山50%」と、それぞれ改める。

(14) 同11頁5行目の「相当である」の次に「(なお、控訴人らは、保険代理店の収入は、開業後の時間が経過するに従って増加する一方であるから、上記200万円は多すぎる旨の主張をするが、収入の増加に伴って、経費も増加していくのが通常であることに照らせば、上記主張を採用することはできない。他方、被控訴人は、保険代理店の経営には多額の経費を要することを理由として、上記200万円では少なすぎる旨の主張をしているが、控訴人らが主張するとおり、営業期間の経過とともに保険契約が累積し、収入が増加していくと考えられることに照らせば、上記主張も採用することはできない。)
(15) 同7行目の「学齢」を「学歴」と改める。
(16) 同11行目の「相当である」の次に「(なお、控訴人らは、被控訴人の後遺障害のうち、労働能力の喪失に直接結びつくのは、右足関節の機能障害〈12級7号〉だけであるとして、被控訴人の労働能力喪失率は12級相当の14%と認められるべきである旨の主張をするが、証拠〈甲191、192、原審における被控訴人本人〉によれば、被控訴人は、開口障害により、長く話すことができず、このことによって、保険代理店の営業活動にも相当程度の支障を来していると考えられることに照らすと、被控訴人の労働能力喪失率を12級相当〈14%〉とするのは相当でない。
)」を加える。

    (後略)



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平成17年2月8日大阪地裁判決

主   文

1 被告らは、原告に対し、連帯して845万6259円及びこれに対する平成12年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の各請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを3分し、その2を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告らは、原告に対し、連帯して3218万1658円及びこれに対する平成12年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

    (中略)

第3 争点に対する判断
1 争点1(被告乙山の過失及び過失割合)について


    (中略)

2 争点2(損害額)について
(1) 前記争いのない事実に証拠(略)を総合すると、次の各事実が認められる。

ア 原告(昭和23年12月1日生、本件事故時51歳)は、平成12年2月5日、本件事故後、直ちに救急車で搬送され、大阪市立総合医療センターにおいて、下顎骨骨折、右脛骨骨折等と診断され、同日、全身麻酔下にて下口唇縫合術を受け、同病院に入院した。原告は、同月17日に下顎固定術を、同年3月7日に右脛骨観血的整復固定術を受け、同年5月10日、同病院を退院した(入院期間96日)。
 原告は、退院後、平成14年9月3日まで、大阪市立総合医療センター、このき歯科クリニック等に通院した(実通院日数約60日)。

イ 原告は、本件事故による後遺障害につき、最終的に平成13年6月15日に症状固定し、大阪市立総合医療センター及びこのき歯科クリニックの医師により、「口が12㍉㍍~25㍉㍍程度しか開かず、左側下唇運動障害、開口障害等の後遺障害が残存する。右腓骨及び脛骨骨折の骨癒合は得られたが、右下腿から足関節に疼痛があり、右足部に痺れが残存し、走行や正座が困難である。顔面部に約10㍉㍍の瘢痕と約80㍉㍍の手術創線状瘢痕が、右下肢に手のひら大面以上の瘢痕が残存する」と診断され、これらの後遺障害により、自賠責保険の事前認定手続において、そしゃく機能障害が10級2号に、右足関節の機能障害が12級7号に、右下肢の醜状痕が14級5号に、男子の外貌の醜状痕が14級11号に該当し、併合9級と認定された。

ウ 原告は、本件事故当時、貝塚郵便局貯金保険課の外交員として稼働しており、主任の地位にあった。外交員は、貯蓄・保険の勧誘などの営業活動をし、ほぼ一定している給与・賞与と営業成績に応じて決められる外交員報酬が支払われていた。
外交員の定年は60歳であった。
 原告は、平成13年5月10日に大阪市立総合医療センターを退院し、同年7月8日から職場に復帰したが、前記の後遺障害のために、以前のように喋ることができず、また、足の傷みから十分な営業活動をすることができなかったため、原告が開拓した顧客を仲間に紹介し、契約が成立した場合には、報酬を仲間と分けるなどの方法を採ったりしていた。
 原告は、このように仲間の協力を得て営業活動をしていたが、周囲に迷惑がかかると考えて、平成15年4月1日をもって退職した。退職するまでの報酬は、本件事故前年の平成11年が給与・賞与727万2362円、外交員報酬320万7334円の合計1047万9696円であり、給与・賞与は平成14年までほぼ一定であるが、外交員報酬は、平成12年196万9840円、平成13年357万5866円、平成14年233万0022円であった。
 原告は、退職後、息子ほか1名の従業員を雇用して保険代理店を始め、平成15年4月から12月までの保険代理店による収入は586万1131円であった。

      (中略)

キ 後遺障害逸失利益 1468万4429円
 原告は、前記のとおり、本件事故により後遺障害が残存しているが、職場復帰後、原告が開拓した顧客を仲間に紹介し、契約が成立した場合には報酬を仲間と分ける方法を採ったりするなど、仲間の協力を得て営業活動を行い、本件事故の翌年の平成13年は外交員報酬が本件事故前よりも増加していることからすると、外交員在職中に関しては、後遺障害が残存したために損害が生じたとは認め難い。
 もっとも、原告は、周囲に迷惑がかかることを考えて、平成15年4月1日をもって外交員を退職しているのであるから、本件事故により退職を余儀なくされたと認めることができ、本件事故がなければ、60歳(平成21年)まで勤務し、本件事故前年(平成11年)の1,047万9,696円程度の年収を得ていたと考えることができる。ところが、現実には、原告は、平成15年4月以降、保険代理店を営み、平成15年は9か月間で586万1131円(年に換算すると781万4841円)の収入を得ているところ、前記外交員の報酬との差額が本件事故による損害と解されるが、平成15年は保険代理店を始めたばかりであり、徐々に収入も増えると考えられるので、原告が60歳に達する平成21年まで平均して年200万円の減収があったと認めるのが相当である。

 平成21年以降、原告が67歳に達する平成28年までは、賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計・学歴計・男子60歳~64歳労働者の平均賃金(平成15年・441万0200円)を基礎とし、上記の後遺障害からすると、後遺障害等級9級の認定はされているが、各後遺障害の労働能力に及ぼす影響を勘案すると、後遺障害等級10級に相当する27%程度の労働能力を喪失したと認めるのが相当である。
 したがって、後遺障害逸失利益は、次のとおり1468万4429円となる。
 200万円×4.7272+441万0200円×27%×4.3922=1468万4429円
(4.7272は、症状固定の平成13年から平成21年までの8年のライプニッツ係数から平成13年から平成15年までの2年のライプニッツ係数を差し引いたもの。
4.3922は、同様に、平成28年までの15年のライプニッツ係数から平成21年までの8年のライプニッツ係数を差し引いたもの。)

ク 後遺障害慰謝料 616万円
 前記認定の後遺障害の内容、程度等からすると、後遺障害慰謝料は、原告の請求どおり616万円と認めるのが相当である。