○「
好意(無償)同乗のみの理由では減額されないのが原則-裁判例紹介1」の続きで、今回は、平成18年4月25日大阪地裁判決(交民39巻2号578頁)と平成16年7月12日東京地裁判決(交民37巻4号943頁)の好意同乗主張と判断部分を紹介します。
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平成18年4月25日大阪地裁判決(交民39巻2号578頁)
二争点
(中略)
8 好意同乗減額の適否
(1) 被告の主張
原告は、被告と一緒にスキー場へ遊びに行くために、被告の運転する車両に同乗したものであり、原告はいわゆる「好意同乗者」であるので、損害額を30%減算することが相当である。
(2) 原告の主張
好意同乗者の類型としては、「単なる便乗・同乗型」、「危険承知型」、「危険関与・増幅型」、「運行供用者型」があるといわれているが、「単なる便乗・同乗型」は減額事由とすべきでない。
原告は「単なる便乗・同乗型」にあたり、本件で好意同乗減額を行うのは相当ではない。
第3 争点に対する判断
(中略)
5 好意同乗減額の適否
本件では、原告は、単なる便乗・同乗者であると認められ、その他、原告が、事故発生の危険性が増大するような状況を自ら積極的に現出させたり、事故発生の危険が高い事情が存在することを知りながらこれを認容して同乗した等の事情は認められない。
従って、原告が、被告車に同乗したこと自体は減額要素にはならない。
平成16年7月12日東京地裁判決(交民37巻4号943頁)
二 争点
(中略)
(2) 好意同乗減額の可否
(被告Y1らの主張)
被告Y2がB車を発見してから停止するまでの間に進行した距離は約1・9mであるのに対し、この間にB車が進行した距離は約23・75mであるところ、仮にこの間に要した時間を1秒とすると、B車の速度は、時速85・5kmになる。
ところで、亡Aと亡Bは、本件事故当時、親友関係にあり、頻繁に行動を共にしていたものであって、亡Aも友人のバイクを借りて運転し、転倒事故を起こしたことすらあったところ、本件事故直前も、連れ立って買物に出掛ける途中であった。このような事情からすれば、亡Aは、亡Bの運転状況をかねてから知っていたものと考えられ、本件事故の際も、前記のような高速度で走行するB車に自ら同乗していたことからすれば、好意同乗減額として少なくとも2割の減額がされるべきである。
(被告Y2及び補助参加人の主張)
仮に被告Y2に本件事故による亡Aの死亡について損害賠償責任が認められる場合であっても、亡Aは、亡Bがバイクを運転した場合、前記(1)において主張したような危険な走行をすることがあり得ることを予め了解した上で、B車に同乗したものと考えられるから、少なくとも20%以上の好意同乗減額がされるべきである。
第三 当裁判所の判断
(中略)
二 争点(2)(好意同乗減額の可否)について
証拠(甲10、乙11、12)によれば、亡Aは、亡Bとは、小学校以来の親しい友人であったこと、高等学校に進学してからは、亡Bとともにバイクに乗ってほぼ毎日のように遊んでいたこと、本件事故当時も、一緒に買物に行くため、B車に同乗することになったことが認められる。
ところで、事故を惹起した運転者ではないにもかかわらず、過失相殺と同様に発生した損害を割合的に減ずるのが相当とされる好意同乗減額が認められるためには、単に運転者の好意に依拠して同乗したというだけでは足りず、運転者が事故を惹起しかねないような具体的な事情を認識していながら、任意の意思で同乗したことが必要であると解される。そうだとすると、前記認定の事情のみからは、亡Bが本件事故を惹起するような走行をすることを、亡Aが認識していながら、B車に同乗していたとまで認めることは困難である。
したがって、この点に関する被告Y1らの主張は勿論、被告Y2及び補助参加人の主張も、その余の点を検討するまでもなく、採用することができない。