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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

その他交通事故

県立高校体育祭騎馬戦落馬重大後遺障害損害賠償約2億円認定判例紹介3

○「県立高校体育祭騎馬戦落馬重大後遺障害損害賠償約2億円認定判例紹介2」を続けます。損害の発生とその金額の算定の一部です。

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3 争点(3)(損害の発生及びその額)について
(1) 原告X1の後遺障害の症状固定時期について

 本件事故により,原告X1は第5頚椎骨折,頚髄損傷の傷害を負い,第7頚髄節以下の四肢完全麻痺の後遺障害が残存したが,その症状固定時期につき,平成16年3月31日とするF医師(以下「F医師」という。)の同年6月29日付け障害報告書(乙13)と,平成23年2月8日の最終受診時であるとする同医師の平成25年6月12日付け診断書(甲2)が並存している。
 そもそも,症状の固定とは,傷害又は病気に対して行われる医学上一般に承認された治療方法(療養)の効果が期待し得ない状態(療養の終了)で,かつ,残存する症状が,自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したときのことであり,もとより一定の予測を伴う概念であって,症状固定と判断された時期の後に,治療方法の進歩等によって残存する症状が自然的経過により到達する状態を超えて改善する可能性を否定するものではない。そうすると,医師が,平成16年3月31日の時点で第7頚髄節以下完全麻痺の症状が固定したものと判断し(乙13),その後平成23年2月8日の最終受診時においても依然として第7頚髄節以下完全麻痺の症状が残存していると診断した以上(甲2),その間,原告の述べるような体力の向上やこれに伴う動作範囲の部分的改善が顕れたとしても,残存した症状が本質的に改善したと判断できない以上,本件において原告X1の損害額を算定するための基準となる症状固定日は,平成16年3月31日と認めざるを得ない。
 そして,原告X1は同年○月○日に19才となったため,以後,原告X1の損害額を算定する上でその平均余命を用いる場合,同年簡易生命表男19才の平均余命60.12の小数点以下を切り捨てた60年とする。

(2) 原告X1の入院期間について
 甲2号証,3号証,10号証の1ないし7及び21号証によれば,原告X1は,平成15年9月7日の本件事故後,同月30日まで福岡大学病院に,同日から平成16年4月15日までは福岡リハビリテーション病院に,同日から同年5月6日までは北京の朝陽病院に,同日から同年7月26日までは再度福岡リハビリテーション病院に,それぞれ入院したと認められる。
 これらのうち,症状固定日である平成16年3月31日以降の日数についても,下記(3)ア及びイの理由により,本件事故に起因する入院日数と認める。
 したがって,本件事故に起因する原告X1の入院期間は,324日間である。

(3) 治療関係費 合計497万4338円
ア 平成16年4月に行われた朝陽病院での手術及び入院費 250万円
 甲2号証並びに甲10号証の4及び5によれば,朝陽病院での手術及び入院は,原告X1が,F医師の勤める福岡リハビリテーション病院に入院している期間に,同病院を一時的に退院して行われたと認められるから,同手術はF医師の指示又は承認の下に行われたと推認できる。加えて,F医師による平成16年3月31日時点での症状固定の診断は,朝陽病院での手術が行われた同年4月以降である同年6月29日に行われたものであって(乙13),当該手術の時点ではF医師も当該手術による症状改善の可能性を否定していなかったと推認できることから,朝陽病院での手術及び入院費を本件事故と因果関係のある損害として認める。
 乙12号証30頁には,その費用総額が280万円であると記載されているところ,このうち原告が主張する費用250万円を損害額と認める。

イ 福岡リハビリテーション病院での入通院治療費 247万4338円
 甲10号証の1ないし8によれば,原告X1は,平成16年1月1日から同年4月15日及び同年5月6日から7月26日までの福岡リハビリテーション病院での入院治療及び同年8月19日の通院治療に,247万4338円(記載された請求金額合計262万5358円から,食事負担額合計14万3520円及び散髪代合計7500円を控除する。なお,原告X1の重篤な症状に鑑み,差額室料も損害として認める。)を要したと認められる。
 これらの費用の内,症状固定日の翌日である同年4月1日以降に支出されたものについても,F医師が勤める福岡リハビリテーション病院でのリハビリテーション(以下「リハビリ」という。)等の治療であってF医師が必要性を認めていたと推認できる上,四肢麻痺の後遺障害を有する原告X1にとって,四肢の関節の拘縮を防ぎ筋力を維持するためにリハビリを継続する必要があると認められるから,本件事故と因果関係のある損害と認める。

(4) 褥瘡防止のための薬品等代金 10万2585円
 甲16号証の1ないし6によれば,原告X1が平成16年7月以降に褥瘡防止のための薬品等の購入に上記金額を費やしたことが認められる。

(5) 再生医療の治療費及びHALFIT使用のリハビリ費用 0円
 原告X1が平成21年の年末頃に受けたという博多駅前かしわぎクリニックでの再生医療費につき,症状固定後の治療としての必要性及び相当性を認めるに足りる証拠がない。
 また,原告X1は,平成26年3月31日にHALFITというリハビリ器具を使用するリハビリ費用として40万円を支出している(甲17)が,これは1回90分1万円のリハビリ40回分の値段である(弁論の全趣旨,特に原告らの平成26年5月16日付け訴えの変更申立書)。原告X1の後遺障害に鑑みれば,症状固定後であっても将来にわたり,関節の拘縮を防ぎあるいは筋力を維持するためリハビリを継続することの必要性自体は認められる。しかし,原告らは他にも,リハビリ器具であるトレッドミルを購入して自宅でリハビリを継続していると主張して,トレッドミルの将来にわたる購入費を請求しているところ,このような自宅でのリハビリとは別にHALFITを使用するリハビリを行う必要性ないし相当性につき,客観的な証拠に基づく主張がされていない。
 したがって,HALFITを使用してのリハビリ費用については損害と認められない。なお,リハビリ器具の将来にわたる購入費については,(13)で検討する。

(6) 入院期間中の付添費用 210万6000円
 原告の負傷ないし後遺障害の程度及び原告らの尋問結果によれば,原告X1は,症状固定日の前後を問わず,排便等を含む日常生活のほぼ全てにわたって生涯他人の看護を要する状態であると認められる。
 また,甲21号証によれば,入院期間中,原告X1は極度の恐怖感におそわれ,その緩和のために原告X2ら近親者が毎日のように付き添っていたと認められる。
 そこで,病院の看護師等による看護も受けられる入院期間中の近親者の付添費用として,日額6500円,324日分を本件事故と因果関係のある損害と認める。

(7) 入院期間経過後,将来にわたる介護費 8647万9596円
 原告X1が退院した日の翌日である平成16年7月27日から,原告X2及び原告X3が共に67才に達する日の前日である平成31年3月26日までの約15年間は,原告X2及び原告X3による介護が期待できるから,日額8000円に相当する年額292万円に,15年間のライプニッツ係数10.3797を乗じた3030万8724円を原告X1の損害と認める。
 また,その後,原告X1が平均余命を迎える平成76年までの45年間は,職業介護人による介護を前提に,日額1万8000円に相当する年額657万円に,60年間のライプエッツ係数18.9293から15年間のライプニッツ係数10.3797を減じた値である8.5496を乗じた,5617万0872円を原告X1の損害と認める。
 したがって,その合計8647万9596円が,原告X1の入院期間経過後,将来にわたる介護費相当額の損害である。

(8) 入院雑費 48万6000円
 入院期間324日につき,1日当たり1500円を損害と認める。

(9) 症状固定日までの紙おむつ代 4万1400円
 甲18号証,原告X1の尋問結果及び弁論の全趣旨によれば,原告X1は本件事故後,1袋30個入り700円の紙おむつを週に2袋使用せざるを得ないと認められ,その代金は日額にして200円である。これは,紙おむつを使用する必要がない者についても損害と認めるべき入院雑費とは別個の損害である。
 したがって,原告X1が平成15年9月7日から症状固定日である平成16年3月31日までの207日間に使用した紙おむつの代金として,4万1400円を損害と認め,その後の紙おむつの代金については下記(13)で検討する。

(10) 朝陽病院への交通費,宿泊費等 83万2545円
 甲9号証の1ないし4及び原告X2の尋問の結果によれば,原告X1は,平成16年4月に朝陽病院に入院し手術を受けるため,通訳及び移動手段等手配料として50万円,原告らのビジネスクラスの往復航空券代として3名分合計30万2715円,福岡リハビリテーション病院から福岡空港までの往復のケアタクシー料金2万9830円の合計83万2545円を支出したと認められる。
 ここで,原告X1の症状及び年齢に鑑みれば,家族の同行は必要であったといえるし,また移動中に原告X1に対する介護を十分に行うにはある程度の広さのある座席等が必要であったと推認できるから,上記の全額を損害と認める。

(11) 装具,器具等購入費
 原告らが主張するこれらの費用のほとんどは,原告X1の症状固定後に生じたものであるから,下記(13)で検討する。

(12) 家屋改造費及び介護用自動車購入費
ア 家屋改造費 180万円
 原告X1の症状,甲20号証及び原告X2の尋問結果により,本件事故により車いすでの生活を余儀なくされた原告X1のために,原告らの自宅の風呂やトイレを改造し,かつ段差をなくす工事を行う必要があり,平成16年の7,8月頃に行われた同工事のために180万円を要したと認める。

イ 介護用自動車購入費について
 原告らが主張するこれらの費用は,原告X1の症状固定後に生じたものであるから,下記(13)で検討する。