○平成27年2月4日付日経新聞で以下の報道がありました。
私は平成27年4月で弁護士稼業36年目に入りますが、いまだ最高裁弁論再開経験がなく、最高裁法廷に立ったことはありません。期待しているのが1件ありますが(^^;)。報道された判例が、私の推定通りとすると、平成24年3月22日東京高裁判決に上告受理申立をして、弁論再開期日指定まで、3年近くかかっています。上告受理却下は最短3ヶ月決まり、私も何度も経験していますが、再開の方は随分時間がかかるものです。
○当事務所でも、「
驚愕の約款3号直接請求否定平成26年3月28日仙台高裁判決まとめ1」記載の平成26年3月28日仙台高裁判決に対して最高裁に上告中で、3万1200字に及ぶ平成26年5月27日付上告受理申立理由書を提出して、9ヶ月を経過しますが、最高裁からは何の連絡もありません。私の経験では却下判決は、上告受理申立書提出後3~5ヶ月後には出ました。ですから弁論再開を大いに期待しているのですが、3年後だとするとまだまだ先です(^^;)。
○最高裁弁論期日指定は、高裁判決見直しが前提と言われています。ですから平成24年3月22日東京高裁判決が見直されるのはほぼ確実ですが、その見直し内容・程度の見通しは難しく、一審に沿った判決になるかどうかは蓋を開けてみないと判りません。平成27年3月4日の判決が楽しみです。一審平成23年3月7日東京地裁判決は4万字を超える大長文判決で、まだ私自身斜め読み程度で論点整理等できていませんが、推定が間違っていましたら、あらかじめお詫び申し上げます(^^;)。
労災認定で遺族年金と相殺、損賠算出法巡り弁論 最高裁大法廷
日経新聞2015/2/4 21:34
労災で損害賠償が認められた場合に、別に支払われる遺族補償給付との相殺の方法が問題になった訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は4日、当事者双方の意見を聞く弁論を開いた。相殺方法次第で総受取額が変わるが、過去の最高裁判決は割れており、大法廷が統一判断を示す見通し。判決期日は後日指定される。
弁論が開かれたのは、過労が原因の急性アルコール中毒で2006年に死亡した会社員男性(当時25)の両親が勤務先に賠償を求めた事案。
一、二審とも会社側に賠償を命じたが計算方法が異なり、一審は賠償額にかかる利息(遅延損害金)から遺族補償給付を差し引いた約5900万円の支払いを命じたのに対し、二審は元本から差し引いた約4300万円に減らした。
遺族側はこの日の弁論で「一審の判断を維持すべきだ」と主張。会社側は「元本から差し引くことが制度の趣旨に合致する」などと反論した。
損害賠償は通常、実際の損害額から遺族が受け取った遺族補償給付分を差し引き、その差額を支払う。民法は491条で利息を元本より先に差し引くと規定し、最高裁は04(平成16)年にこの規定に沿って遅延損害金を先に差し引く判決を出したが、10(平成22)年には別の事案で元本から差し引く判断を示した。判断の異なる最高裁判決が併存し、下級審の判断も割れていた。
○これに引き続き、平成27年2月10日産経新聞で、以下の報道がありました。
賠償額算定で最高裁大法廷が判決期日指定 労災や交通事故補償に「影響か」
産経新聞 2月10日(火)17時29分配信
労災で勤務先を訴えて損害賠償が認められた場合、別に受領した労災給付金を賠償金の元本と利息のどちらから控除するかが争われた訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は10日、判決期日を3月4日に指定した。15人の裁判官全員による大法廷の審理は判例変更が必要な場合に開かれる。同種事案では最高裁の判断が分かれており、大法廷が統一判断を示す見込みで、労働災害や交通事故の補償実務に影響にするとみられる。
交通死亡事故の遺族が賠償を求めた訴訟の平成16年第2小法廷判決は、いったん利息を計算した上で、受給額を差し引くべきだと判断。22年の第1小法廷判決は、交通事故で後遺症が出た被害者が賠償を求めた訴訟について、元本から受給額を差し引いた上で利息を計算するべきだとした。22年判例のほうが、最終的な受領額が少ない。
○私の持っている判例データベースで調べると、次の判例のようです。
一審平成23年3月7日東京地裁判決(労働法律旬報1749号54頁)で主文は以下の通りです。
主 文
1 被告は原告X1に対し,2830万2273円及び内金1137万円に対する平成18年9月16日から,内金57万5335円に対する平成19年10月17日から,内金1635万6938円に対する平成22年10月16日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は原告X2に対し,3130万3432円及びこれに対する平成18年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,原告X1に生じた費用と被告に生じた費用の2分の1との合計の25分の11を原告X1の,25分の14を被告の各負担とし,原告X2に生じた費用と被告に生じた費用の2分の1との合計の50分の19を原告X2の,50分の31を被告の各負担とする。
5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。
二審平成24年3月22日東京高裁判決(労判 1051号40頁)で主文は以下の通りです。
主 文
1 第1審被告の控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。
(1) 第1審被告は,第1審原告X1に対し,1817万5861円及びこれに対する平成18年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 第1審被告は,第1審原告X2に対し,2568万8987円及びこれに対する平成18年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 第1審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
2 第1審原告らの控訴をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,第1,第2審を通じてこれを2分し,その1を第1審原告らの負担とし,その余を第2審被告の負担とする。
4 この判決は,主文第1項(1)及び(2)に限り,仮に執行することができる。