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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

交通事故重要判例

追突事故での統合失調症発症との因果関係を認めた判例全文紹介1

○「追突事故での統合失調症発症との因果関係を認めた判例概要紹介」の続きです。
判決全文の内、事案の概要の前提事実までです。


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主 文

1 被告Y保険会社は、原告に対し、1,374万1,645円及びうち1,347万8,455円に対する平成21年4月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告W保険会社は、原告に対し、前項の金員のうち541万円を支払え。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、これを20分し、その16を原告の負担とし、その3を被告Y保険会社の負担とし、その1を被告W保険会社の負担とする。
5 この判決の1項及び2項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一 請求
1 被告Y保険会社は、原告に対し、7,651万8,910円及びうち6,774万9,205円に対する平成21年4月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告W保険会社は、原告に対し、前項の金員のうち976万円を支払え。

第二 事案の概要
 本件は、原告が、交通事故により負傷し後遺障害が残る等による損害を被ったとして、交通事故の相手方車について自動車総合保険契約(以下「任意保険」という。)を引き受けていた被告Y保険会社に対して、任意保険の直接請求権に基づく損害賠償請求として7,651万8,910円及びうち6,774万9,205円に対する損害賠償の最終内金支払日の翌日である平成21年4月4日からの遅延損害金の支払いを求めるとともに、相手方車について自動車損害賠償責任保険契約(以下「自賠責保険」という。)を引き受けていた被告W保険会社に対し、自動車損害賠償保障法16条に基づき、自賠責保険の保険金額の限度での人的損害にかかる損害賠償請求として976万円の支払いを求める事案である。

1 前提事実
(1)交通事故の発生

 原告所有、運転の普通乗用自動車(ナンバー(略)。以下「原告車」という。)と訴外丁山四郎(以下「訴外丁山」という。)運転の普通乗用自動車(ナンバー(略)。以下「訴外丁山車」という。)との間で以下の交通事故(以下「本件交通事故」という。)が発生した。

ア 日  時 平成18年2月15日午後4時ころ
イ 場  所 仙台市<地番略>
ウ 事故状況 原告車と訴外丁山車が交差点を同一方向に右折するにあたり、訴外丁山車が、原告車の後部に衝突した。

(2)原告の治療経過
ア 原告は、本件交通事故の後、頸椎捻挫、腰背部挫傷等の診断を受け、平成19年3月27日に同日症状固定の診断を受けるまで、以下の医療機関における治療を受けた。
(ア)B病院・整形外科・入院
 入院期間 平成18年2月15日〜平成18年2月22日(入院実日数8日)

(イ)B病院・整形外科・通院
 通院期間 平成18年2月23日〜平成19年3月27日(通院実日数97日)

(ウ)Cクリニック・通院
 平成18年2月23日、平成19年3月3日の2日

イ さらに原告は、本件交通事故の後、統合失調症の診断を受け、以下の医療機関における治療を受けた。その間、平成19年12月26日には統合失調症につき同日症状固定の診断を受けている。
 B病院・神経精神科・通院
 通院期間 平成18年3月15日〜平成22年3月23日(通院実日数116日)

(3)原告の後遺障害についての自賠責保険等級認定の結果
 原告は、後遺障害についての自賠責保険等級認定を受け、
ア 上記(2)アの後遺障害である頸部重苦感、両上肢痺れ感の症状につき、「局部に神経症状を残すもの」として、自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するとの認定を受けたが、

イ 上記(2)イの統合失調症については、本件交通事故との相当因果関係は認められないとして、自賠責保険における後遺障害としては認定されなかった。

(4)原告について
 原告は、昭和45年8月に出生した男性であり、本件交通事故時35歳であった。最終学歴はD専門学校卒業である。

(5)被告らについて
ア 被告Y保険会社は、訴外丁山車の所有者や運転者を被保険者として、訴外丁山車の所有、使用又は管理に起因して他人の生命若しくは身体を害し又は他人の財物を損壊することにより、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して保険金を支払うべき責任を任意保険により引き受けていたところ、任意保険では、対人事故によって被保険者の負担する法律上の損害賠償責任が発生した場合においては、損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で承諾した場合は、損害賠償請求権者は、被告Y保険会社に対して、被保険者が損害賠償請求者に対し負担する法律上の損害賠償責任の額を請求することができる旨(直接請求権)が定められている(争いなし)。

 原告は、訴外丁山ら被保険者に対し、損害賠償請求権を行使しないことを書面をもって承諾して、もって、被告Y保険会社に対して直接請求権を行使し得べき要件を整えた。

イ 被告W保険会社は、訴外丁山車について自賠責保険を引き受けていた(争いなし)。