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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

物損

格落ち損請求は登録5年以内が要件ではありません

○当HPの「交通事故専用ご相談フォーム(小松法律事務所専用)」での相談者の方の相談に「自分なりに勉強してみたところ格落ちとは新車登録5年以内の車にしか適用されないとありました。私の車は5年半になります。評価損としてもう少し要求したいと思っていましたが、これ以上の上乗せは無理だと思ったほうが良いでしょうか?」との質問がありました。

○そんなバカなと思って私が利用している交通事故判例データベースに「格落ち損 登録期間」とのキーワードで検索してみると初度登録平成4年、原告購入時、既に14年経過のポルシェカレラ時価約500万円に被告原付自転車が衝突、左ドア等38万5319円の修理費損害を生じた事案につき、「商品価値の下落が生じた」とし、修理費用のほぼ半額に相当する20万円を評価損と認めた平成20年7月17日横浜地裁判決(自動車保険ジャーナル第1753号)等登録5年以上でも格落ち損を認めている判例があります。

○青本、赤本にも格落ち損に関する解説はありますが、認定要件に登録5年以内なんて記述はありません。この格落ち損に関して最も詳しい文献は、「評価(格落ち)損についての海道野守氏文献紹介」に紹介した保険毎日新聞社発行事故調査会海道野守著「裁判例、学説にみる交通事故物的損害評価損第2集-3」です。この書籍の15頁以下に「評価損(格落ち)に対する裁判例の傾向」との表題で8頁に渡ってレポートされています。ここでも登録後5年以内なんて記述はなく、むしろ「評価損発生の判断基準は確立していないが、被害車両を売却して現実に発生を確認する必要はなく、初度登録後一定期間内の車両にしか発生しないとは言えない。」と登録期間要件については否定的です。

○以下、海道野守氏著作からの備忘録です。
裁判例・学説から導かれる評価損のまとめ
(1)評価損は、事故と相当因果関係のある損害であり、学説、裁判例の多数は認める方向にある。
(2)評価損は、修理可能な分損の場合に発生するもので、修理不可能な全損の場合は発生しない。
(3)事故によって自動車を修理すれば、必ず評価損が発生するとは言えない。
(4)評価損発生の判断基準は、現段階で明確に示すことは出来ないが、およその基準がある。被害車両を売却して、評価損が「現実化」しないと認めないとか、初年度登録6ヶ月以内の自動車にしか評価損は発生しないとは断定できない。
(5)初年度登録から事故日までの期間が短い程認められる確率は高い。一方、損傷程度が大きい程認められ易いと大まかには言える。
(6)評価損を認めるとした場合、その損害額の算出方法は、修理費を基準として修理費の30%とするのが一般的である。

評価損(格落ち損)発生原因
a.修理技術上の限界から、顕在的に、自動車の性能、外観等が、事故前より低下すること。
b.事故による衝撃のために、車体、各種部品等に負担がかかり、修理後間もなくは不具合がなくとも経年的に不具合の発生することが起こりやすくなること。
c.修理の後も隠れた損傷があるかも知れないとの懸念が残ること。
d.事故に遭ったと言うことで縁起が悪いと嫌われる傾向にあること。