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松本守雄医師講演会”頚椎加齢性疾患と頚部損傷”備忘録1」を続けます。
5.頚椎疾患の診断
患者を「直接」診てのその神経症状を知る理学所見が最も重要、後遺障害認定の場合も理学所見を重要視すべき。
・局所所見:患者の姿勢肢位、斜頚・頚の変形・可動域制限の有無、動かす・押す・叩くと痛いかどうか。
・神経学的所見:神経の問題の有無、反射・知覚・筋力等の検査、有名な検査として頭を押さえつけて頚をそらせるスパーリングテスト、ジャクソンテスト−、これは人為的に神経根に刺激を与えて患者の痛みが増加するかどうかを診る。
各種検査
反射検査:反射は患者自身がコントロールできないので一番客観的な神経学的所見として最も重視。
腱反射として上腕二頭筋腱反射、上腕三頭筋腱反射、膝蓋腱反射、アキレス腱反射等、打腱器で腱を叩きその反応を見る。大まかに言うとその腱反射が更新した場合は脊髄の異常、低下・消失した場合は脊髄から分かれた神経の枝の症状。
足の裏をこするバビンスキー反射・クローヌスは脊髄の異常の有無を検査
ホフマン反射
知覚検査:刷毛・針等の道具で患者を摩ることによる反応「痛い」、「痛くない」、「しびれる」等を見るが、患者の反応は必ずしも全て客観的とは言えない
筋力検査:筋力をゼロから五段階評価。患者の協力が必要な半客観検査。
反射・知覚・筋力の検査結果が全て揃うことはなかなかないが、少なくとも二つが合理的に揃い、更に画像検査所見と一致した場合非常に有意な整合性ある所見となる。
6.画像検査
・単純X線
主に骨に関する情報を得る。筋肉・靱帯の情報は乏しい。普通の単純X線だけでは頚椎骨折・小さな外傷は見逃される。15〜30%見逃されるとの報告もある。
交通外傷で靱帯が損傷されると骨と骨のずれや不安定な状況がX線で観察されることもある。
交通外傷の場合の頚椎直線あるいは後弯化については、40歳未満の若い女性は、6割が頚椎が直線あるいは後弯化しており、交通事故のせいかどうかは慎重に判断すべき
・MRI
人間の身体の殆どを構成する水素原子の運動を信号として捉えて画像化したもの。骨だけでなく軟部組織(脊髄、椎間板、筋肉等)をきれいに見ることが出来る。
同じ方向でもコントラストを変えることで水が白く写ったり黒く写ったりするので質的診断に役立つ。
MRIを用いた頚椎椎間板の加齢変化
MRIでは加齢変化もきれいに描写できるので、健常者とむち打ち患者各500例のMRI検査結果研究。
結果は、椎間板輝度低下(水分減少)所見は、椎間板狭小化所見、いずれも経年によってズッーと増え、両者に有意な差がなく、椎間板膨驍ノよる脊髄圧迫も両者に有意な差がなく、健常者即ち無症状者も20%は脊髄圧迫がある。
結論として、健常者も損傷者も、椎間板変成については、有意な差がなく、むち打ち患者の受傷早期におけるMRI陽性所見は診断的価値は余りない即ち当てにならない。
しかし、慢性期即ち受傷後相当期間経過してのMRI所見はそれなりの診断的価値はある。
・CT
骨・軟部組織情報が得られ、最近は短時間撮影が可能になり、また任意の断面で再構成出来るため有意な検査となっている。X線で見逃された骨折も発見出来る。
・電気生理学的検査
画像検査の補助として利用。患者の症状が必ずしも反映されない場合もあるので。
筋電図
体性感覚誘発電位
サーモグラフィー