休業損害期間の算定方法−身体機能回復程度考慮すべき
○交通事故による傷害での財産的上の損害は、休業損害と逸失利益が大きなものですが、両者ともその基礎となる算定期間の長さが良く争いになります。
今回は、休業損害について検討します。
家庭の主婦のAさんが、交通事故によって下半身骨折等の傷害を受け、2ヶ月入院し、退院後、1年間通院して、症状固定となり、第10級相当後遺障害認定を受けたとします。後遺障害等級第10級の基準労働能力喪失率は27%です。
退院後1年間の通院状況は、前半6ヶ月間は、週2回平均で50日、後半6ヶ月間は週1回平均25日とします。
○休業損害期間は、会社員であれば、実際に会社を休んだ日数とそれによる給料の減額が、数字にハッキリ出ますので、比較的認定しやすいのですが、上記の主婦や自営業者の場合、その休業の状況は、ハッキリしない面があり、認定が難しくなります。受傷から症状固定まで3年間もかかり、最終的に神経症状での14級の後遺障害認定を受けた方から、受傷から症状固定までの期間全体3年間が休業期間に該当するはずなので、3年分の休業損害を主張して欲しいと強く要請されたことがありますが、このような主張はまず認められません。この方は、素人向け交通事故文献で症状固定までの期間全体が休業損害が認められると誤解していました。
○上記設例で、主婦としての休業期間をどの程度主張できるか検討します。
先ず入院中の2ヶ月間がまるまる休業期間となることは全く異論がありません。問題は、退院後の1年間の通院期間中、どこまで休業期間と主張すべきかです。
これは、退院後の症状経過、身体能力の回復具合の進行程度、通院に係る時間と労力等を総合判断して決定しますが、100%休業期間を通院期間中の一定期間に区切るのは、困難でどうしてもどんぶり勘定にならざるを得ません。身体能力回復具合は、カルテの記載等を参考にしますが、仕事がどの程度まで可能になったかまでの詳しい記載は、通常、殆ど無いからです。
○上記のように後遺障害が第10級が認定され基準労働能力喪失率が27%になった場合は、症状固定時において27%の労働能力喪失が原則として認められますので、一定期間ごとに労働能力喪失程度を下げていく方法での算定方法が、合理的と思われます。
例えば、受傷後症状固定までの14ヶ月間についての労働能力喪失程度を、入院中2ヶ月と退院後3ヶ月間の計5ヶ月間を100%、その後5ヶ月間を70%、その後4ヶ月間を30%と労働能力喪失率回復期間を3つに区分する方法があります。
この方法だと、主婦としての収入を賃金センサス全女性平均年約360万円とした場合月額30万円となりますので、
30万円×5ヶ月+30万円×5ヶ月×0.7+30万円×4ヶ月×0.3=291万円となります。
○さらに、入院中と退院後スタート時点までを100%喪失として、退院後は1年後の27%喪失に至るまで、徐々に労働能力喪失率が100%から27%まで回復するとの計算方法もあります。この場合、100%と27%との差額73%を365日間かけて回復するわけですから、73%÷365日で一日に付き0.2%ずつ回復していくことになります。しかし、この方法は却って実態と合わないかも知れません。
仮にこの方法だと、主婦収入360万円として
30万円×2ヶ月+(一日1万円×1+1万円×0.998+・・・・+1万円×0.272+1万円×0.27)
30万円×2ヶ月+1万円(1+0.998+0.996・・・・0.272+0.27)
となるはずですが、その計算方法、少々中学・高校時代の数学を勉強し直さないと計算できません(^^;)。後日数学の先生に確認して簡単な計算方法を検討し直します。