○「
平成20年1月10日横浜地方裁判所低髄液圧症候群認定判決2」を続き、争点の後半です。
被害者は、脳脊髄液減少症による「
身体の各所の痛み、しびれ、けん怠感等のために仕事をできる日は限られており、面談予約を取るための電話の回数、実際に取れた面談の約束の数、販売した布団数等は、本件事故前に比べて大幅に減少し」たことによる休業損害として約915万円請求しましたが、保険会社側は、「
被告甲野太郎に休業損害は発生していない」と全面否認しました。
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(3)被告甲野太郎の休業損害 915万3083円
ア 被告甲野太郎の主張
(ア)休業期間を平成16年2月22日から平成17年7月20日までの7か月間、基礎収入を賃金センサス(43歳男子学歴計)の646万1,000円とする。
(計算式)17か月×646万1,000円
12か月
(イ)a被告甲野太郎は、布団の製造販売を行う会社からの委託で布団を顧客に販売する布団販売業に従事しており、一種の自営業者である。すなわち布団の販売代金は委託元の会社に入るが、仕入原価等を控除した差額が同被告に支払われる。
布団の売買契約は委託元の会社と顧客との間で締結されるが、事実上は委託元の会社から同被告に販売され、同被告が顧客に販売するという扱いがなされており、売買代金の支払等の責任はすべて同被告が負担することになる。
同被告は、自ら顧客候補者の名簿を購入して電話で面談の約束を取りつけた上で、当該顧客候補者の自宅等において面談し、営業活動をしていた。電話と車1台があれば成立する職業であるが、それだけに販売の成否は同被告の体調のみによる。すなわち何名の顧客候補者に電話するか、何名と面談を約束できるかは、同被告の体調に左右される。同被告は弁舌がさわやかで、顧客候補者から面談の約束を取りつけるのも、面談した者と契約をするのも、非常に上手であった。同被告の個人売上高は常にトップクラスであり、年に数億円の売上げを計上することもあった。
b同被告は、仕事の内容が上記のようなものであったことから、本件事故後も全く仕事をしなくなったわけではない。しかしながら、身体の各所の痛み、しびれ、けん怠感等のために仕事をできる日は限られており、面談予約を取るための電話の回数、実際に取れた面談の約束の数、販売した布団数等は、本件事故前に比べて大幅に減少した。
本件事故が発生した平成16年2月22日からF病院における通院治療を終えて本件事故による身体的影響が消えた平成17年7月20日までの約1年5か月間、本件事故が同被告の仕事に与えた影響は時期によって波があるが、全体としてみれば、同被告が顧客候補者に掛けた電話の数は、本件事故前の50%以下、布団の売上代金は本件事故後の30%以下であった。
c平成15年、平成16年の粗利益はそれぞれ1億5464万3464円、6376万7214円であり、これは諸経費控除前の数字であるが、同被告の仕事に要する経費は電話代及び自動車関係費用のみであるから、年間500万円前後にとどまり、平成16年に経費が零になっていたとしても、同被告の減収は年間で8600万円にも上る。
イ 原告の主張
被告甲野太郎に休業損害は発生していない。
被告甲野太郎は、本件事故後も平成16年9月末までは就労しており、その間、休業損害の内払請求もしなかった。なお、同被告は、平成17年7月20日までの休業損害を請求しているが、同年6月11日、仕事を始めた旨医師に説明している(証拠略)。
(4)被告甲野太郎の慰謝料
ア 被告甲野太郎の主張 177万円
被告甲野太郎は、本件事故により、10日間入院し、17か月間にわたり通院しており、その慰謝料としては177万円が適当である。
イ原告の主張 100万円
(5)過失相殺
ア 原告の主張
本件は、交差点において右折車と直進車とが衝突した事故であるが、直進車も、右折車に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度及び方法で進行しなければならないとされているところ(道路交通法36条4項)、被告甲野太郎には、原告車両の動きを漫然と観察して右折を開始しないものと考え、速度を調節せずに進行した過失があり、少なくとも10%以上の過失相殺がなされるべきである。なお、本件事故は、信号機により交通整理の行われている交差点において、右折車両と直進車両がいずれも青信号で衝突したという事案であるところ、この場合の直進車両すなわち被告車両の基本的な過失割合は20%である。
また、被告甲野花子は同乗者であるが、被告甲野太郎の親権に服する未成年者であるから、被害者側の過失として上記過失相殺が適用される。
イ 被告らの主張
争う。本件事故において、被告甲野太郎に過失はない。
(6) 弁護士費用
ア 被告甲野太郎の主張 120万3,652円
イ 被告甲野花子の主張 3,790円
ウ 原告の主張
いずれも争う。