保険会社への直接請求裁判の判決例紹介1の1
○交通事故に基づく損害賠償請求権について、保険会社への直接請求をした事案の判決例を紹介します。この事案は、保険会社ではなく農協共済に対する請求ですが、約款は保険会社のものと殆ど同じであり、保険会社への請求にも適用になるはずです。
○この事案では損害保険では自賠責保険に相当する農協連合会にも請求しており、自賠責保険と任意保険のカバーする範囲の問題等色々な論点を含むもので、大変苦労しました。任意保険(本件ではJA共済)側からは、被害者は82歳の老人で且つ老人側の過失も大きいとして、自賠責保険金約1727万円の支払で十分損害が填補されたとしてそれを超える支払を拒否されていました。
○最終的には以下の判決に基づき、被害者側の過失相殺として1割減額されながらも、自賠責保険金受領額の他に約1177万円が認容され、トータルで約2900万円の支払が認められました。事案内容、論点については、別コンテンツで後日説明します。
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平成19年8月8日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成19年(ワ)第140号 損害賠償請求事件
判決
仙台市○○
原告 甲野太郎
○○県○○
原告 丙野花子
仙台市○○
原告 丁野幸子
原告ら訴訟代理人弁護士小松亀一
東京都○○
被告 乙農業共同組合連合会
同代表者代表理事 乙野次郎
福島県○○
被告 戊協同組合
同代表者代表理事 戊野三郎
被告ら訴訟代理人弁護士 ○○○○
主文
1 被告乙協同組合連合会は,原告丙野花子に対し,金139万7897円及び内金135万円に対する平成19年7月18日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告乙協同組合連合会は,原告丁野幸子に対し,金139万7897円及び内金135万円に対する平成19年7月18日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告戊協同組合は,原告甲野太郎に対し金30万0597円及び金762万3384円に対する平成19年7月18日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告乙協同組合連合会は,原告甲野太郎に対し金859万3260円を支払え。
5 原告らの被告らに対するその余の請求を棄却する。
6 訴訟費用は,これを10分し,その6を被告らの負担とし,その余を原告らの負担とする。
7 この判決の第1ないし第4項は,仮に執行することができる。ただし,被告乙協同組合連合会が原告丙野花子の関係で金100万円,原告丁野幸子の関係で金100万円,原告甲野太郎の関係で金700万円の各担保を供するとき,被告戊協同組合が原告甲野太郎の関係で金20万円の担保を供するときは,その仮執行を免れることができる。
事実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1)被告乙協同組合連合会は,原告丙野花子に対し,金206万7945円及び内金200万円に対する平成19年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)被告乙協同組合連合会は,原告丁野幸子に対し,金206万7945円及び内金200万円に対する平成19年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)被告戊協同組合は,原告甲野太郎に対し金1760万3591円及び内金1702万5201円に対する平成19年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)被告乙協同組合連合会は,原告甲野太郎に対し,前項の金員の内金859万3260円を支払え。
(5)訴訟費用は被告らの負担とする。
(6)仮執行宣言
2 請求の趣旨に対する被告らの答弁
(1)原告らの請求をいずれも棄却する。
(2)訴訟費用は原告らの負担とする。
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1)事故の発生
訴外甲野有子(大正12年△月×日生,以下「訴外有子」という。)は下記の交通事故(以下「本件事故」という。)による脳挫傷で平成18年2月25日,死亡した。
記
日時 平成18年2月25日午後3時ころ
場所 仙台市○○先の丁字路交差点付近(以下「本件事故現場」という。)
加害車両 訴外己野四郎(以下「訴外己野」という。)運転の普通乗用自動車(福島○○×△△△号,以下「加害車両」という。)
事故態様 訴外有子が上記交差点を歩行横断中,訴外己野が前方不注視のまま加害車両を運転して進行し,訴外有子に衝突したもの
(2)訴外己野の責任
訴外己野は,加害車両を運転するにあたり,前方左右を注視し,進路の安全を確認しながら進行すべき注意義務があったところ,これを怠り,本件事故現場を訴外有子が歩行横断中であったのに,助手席に落ちたノートを拾うため,その方に身を屈めて脇見し,進路の安全確認不十分のまま漫然と進行した過失により,訴外有子に加害車両を衝突させて死亡させたものであるから,訴外己野には,民法709条ないし711条,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条により訴外有子及び原告らに生じた損害を賠償すべき責任がある。