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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

不倫問題

不貞行為損害賠償請求-先進諸国法令ではむしろ例外的との解説発見3

○「不貞行為損害賠償請求-先進諸国法令ではむしろ例外的との解説発見2」を続けます。
不貞行為損害賠償請求-先進諸国法令ではむしろ例外的との解説発見2」「スエーデン・ノルウェー・フィンランド等北欧諸国でも不貞行為第三者責任なんておそらく、それ、なに?と言う感覚ではないかと推測しています。」と記載していました。

○その推測の根拠について「スウェーデン新婚姻法 」について解説した「離婚の自由制限-日本婚姻法との比較2」に「先日スウェーデンに行く機会のあった友人の学者さんにスウェーデンの弁護士さんにこの点を確認して欲しいと要請していましたが、確認してみると『(貞操義務って)何、それ?』と笑われたそうで、法的な権利義務関係を生じる貞操義務はスウェーデンには無いとのことでした。配偶者が浮気しても他方配偶者に損害賠償義務が生ずることはなく、まして浮気相手の間男・間女?に対する損害賠償請求などおよそ考えられないそうです。 」と記載していたことを思い出しました。

○要するに、スエーデンでは貞操はあくまで自由・自発的意思で守るものであり、貞操を守ることを義務とするなんて発想はないと思われます。貞操を守る自由・自発的意思がなくなったら、それを損害賠償金支払支払との圧力で守らせるなんてとんでもないという発想であり、ドイツの「失われた愛の慰謝料は存在せず」という格言に繋がります。

○ところが日本では、配偶者の一方が浮気をしたら、その浮気をした配偶者本人だけでなく、その相手方まで、「間男」、「間女?」なんて呼ばれて損害賠償義務を課せられます。おそらくスエーデン国民からはなんと野蛮な考え方だと思われるでしょう。本来、貞操なんて、その人の自由意思に任せるべきで、力で貞操義務を強要するなんておよそ考えられないのが常識と思われるからです。

○日本で間男・間女?まで損害賠償義務を負う考え方は、江戸時代の不義密通打ち首獄門制度、戦前までの姦通罪等の考え方の名残と言われています。ちなみに明治時代の姦通罪関連規定は、以下の通りです。

旧刑法(明治13年太政官布告第36号) 第353条
有夫ノ婦姦通シタル者ハ6月以上2年以下ノ重禁錮ニ處ス其相姦スル者亦同シ(夫のある女子で姦通した者は、6ヶ月以上2年以下の重禁錮に処する。その女子と相姦した者も同様とする。)
旧刑法(明治40年法律第45号) 第183条
 有夫ノ婦姦通シタルトキハ2年以下ノ懲役ニ處ス其相姦シタル者亦同シ(夫のある女子が姦通したときは2年以下の懲役に処す。その女子と相姦した者も同じ刑に処する。)
旧民法 第768条
 姦通によって離婚または刑の宣告を受けた者は相姦者と婚姻することはできない。


○なんと姦通罪の主体は、夫ある女性とその相手方男性に限定されています。妻ある男性が姦通しても何のおとがめもありません。とんでもない不平等規定です。戦後、その不平等が問題になり、国会で廃止の議論がなされましたが、家庭が乱れると男性議員が反対し、それでは、男女平等が基本だから、妻ある男性も姦通罪の主体としようという議論が起こると、反対男性議員はたちまち廃止賛成に回ったという笑い話があります。もし、妻ある男性も姦通罪の主体となったら、反対男性議員に中に「2年以下の懲役に処」される者が続出したからと思われます(^^)。