子供への面会拒否について元妻再婚相手にも賠償命令報道に驚く
○離婚調停において親権者を母として、養育料を支払う夫との面会交流について規定しても、実際には、母が夫に対して、都合が付かない、子供が会うのを嫌がっている等の理由で面会交流を拒否し続ける例が多くあります。これに対し、会わせてもらえない夫が面会交流を拒否する母に対し、債務不履行等を理由に損害賠償請求する例も結構あるようで、裁判例を調べてみましたが、請求が認められた裁判例は余り見当たりません。
○余り見当たらない中で平成21年7月8日横浜地裁判決(家月63巻3号95頁)は、面会交流調停成立後の非監護親父の行為が,監護親母の心理的負担となり,その感情を害するものであるとしても,その行為が調停合意に反するものとはいえないとして、父の母に対する300万円の請求に対し70万円の支払を認めました。
○この判決では、長女が原告父と会うことに消極的であることについて、「面接交渉が中断されていたために原告と長女との間に十分な交流の機会が与えられなかったことにより,長女に原告に対する共感ないし配慮の心理を十分に形成する機会が与えられなかったことが相まって,長女の意識の中で原告の言動に対する否定的な側面が相対的に強化され,長女の面接交渉に対する消極的な意向を形成することとなったものと考えられる。
したがって,長女が原告との面接交渉について消極的な意向を有するに至ったことについても,本件合意に係る面接交渉の不履行が一因となって生じた結果として,被告に,相応の責任があるというべきである。」と会わせない母親に厳しい判断しているのが注目されます。
○会わせない母だけでなく、再婚相手にまで慰謝料請求をして、請求が一部認められたとの以下の毎日新聞報道には驚きました。面会交流を求める父側の権利が強く認識されるようになってきています。熊本地裁では以前面会交流を拒否することについて母親代理人弁護士にまで慰謝料支払を認めた判決がありましたが、この熊本地裁判決全文の公開が待たれるところです。
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<子供への面会拒否>元妻の再婚相手にも賠償命令 熊本地裁
毎日新聞 1/23(月) 7:45配信
熊本県内の40代男性が離婚後に別居した長男(12)と会えないのは元妻とその再婚相手が拒んでいるためとして、2人を相手取って慰謝料300万円の損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁(永田雄一裁判官)は、事前の調停で義務づけられた面会の日程調整に関する連絡義務を怠ったとして再婚相手に元妻と連帯して30万円を支払うよう命じた。元妻には70万円の支払いを命じた。離婚後に別居した子供との面会交流拒否を巡り、元配偶者の再婚相手の賠償責任を認めるのは異例。
判決は昨年12月27日付。判決によると、男性と元妻は2006年2月の離婚調停で、親権がない男性と長男の月2回程度の面会交流に合意して離婚。当初は面会できたが、元妻の再婚後の12年7月ごろ、男性に長男と会わないよう求める連絡が元妻側からあった。
男性は長男と面会交流できるよう熊本家裁に調停を申し立て、14年1月、再婚相手を連絡調整役として面会交流することで合意。しかし、元妻や再婚相手から連絡が滞り、日程を調整できないまま12年5月~15年10月の約3年5カ月間、男性は長男と面会できなかった。元妻は、自身の体調不良や再婚相手と長男との父子関係の確立のために面会できなかったと主張していた。
永田裁判官は「被告の主張は面会日程を調整する協議を拒否することを正当化するものではない。長男が7歳から10歳に成長する大切な時期に交流できなかった原告の精神的苦痛は相当大きい」と指摘。元妻は日程を協議する義務を怠り、再婚相手も連絡義務に違反したとして、いずれの賠償責任も認めた。
原告代理人の板井俊介弁護士は「再婚相手の賠償責任を認めた点で画期的だ。面会交流が父親と子供の双方にとって利益があることを示した判決としても評価できる」と話した。【柿崎誠】
◇連絡調整機関を
棚村政行・早稲田大教授(家族法) 離婚で別居した親子の面会交流で一方の再婚相手が連絡役となるケースが増え、再婚家庭の安定と面会交流の継続を両立させるために特別の配慮が必要になっている。欧米のように面会交流の連絡調整をしたり、交流が不調だった場合にカウンセリングしたりして当事者を支援する専門機関を育成するべきだ。