本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

財産分与・慰謝料

財産分与における子供名義預金の考え方まとめ

○「子供名義預金が財産分与対象にならないとした判例全文紹介」、「子供名義預金と財産分与の関係に言及した3判例要旨紹介」で子供名義預金が財産分与の対象になるかどうかが争いなった裁判例を紹介しました。裁判例では肯否両説あります。裁判例は具体的事案毎にケースバイケースに考えますので同じ論点でも異なる結論が出るのは当然のことです。

○しかし、裁判例における結論を導く論理から考え方の基本が見えてきますので、以下、私なりの子供名義預金に関するまとめ備忘録です。
先ず財産分与の考え方の基本は、平成16年1月28日東京地方裁判所判決(LLI/DB判例秘書登載)の
婚姻中に取得した個々の財産が各配偶者の特有財産であるか,それとも夫婦の共有財産に該当するかを判断するに当たっては,取得の際の原資,取得した財産の維持管理の貢献度等を考慮して判断しなければならないが,特段の事情が認められない場合には,夫婦の共有財産に属するものとして,財産分与の対象となるものと言わねばならない。
です。

○この基本的な考え方からは、子供名義の預貯金については、「婚姻期間中に得られた収入等により夫婦のいずれかの名義又は子供名義で取得した財産は,夫婦の共有財産に当たるもので,財産分与の対象となることは明らかである。」となります。

○しかし、財産分与の対象になる要件は、「婚姻期間中に(夫又は妻の婚姻中の働きにより)得られた収入等により取得した財産」です。夫婦の一方が、親の財産を相続し、或いは親その他の第三者から贈与された財産は、夫又は妻の婚姻中の働きにより得られた財産ではありませんので、財産分与の対象となる夫婦共有財産とはならず、「特有財産」と呼ばれます。

○子供名義預貯金の場合も、同様で、その子供自身に対する贈与と確定できるものは子供自身の特有財産で、財産分与の対象とはならないと考えるべきでしょう。例えば子供の祖父母・親族等第三者が、その子供を名指しで確定的に贈与した金員(お年玉等)です。
この点平成16年3月18日東京地方裁判所判決(LLI/DB判例秘書登載)は、「(子供名義)A,B名義の預貯金は,ほぼ全て同人らに対する様々なお祝いや,お年玉などを貯めているものであり,本来的に本人らに帰属させるべきものである。」また、この判例では、「(障害児)Cの預貯金は,A,B同様のお祝いやお年玉のほかに,Cが障害児であることから,その将来のために出生後,原告と被告の給与から各1万円月々2万円ずつ貯え,また,障害児手当なども併せて貯めているものであって,これもまたCに帰属させるべきものである。」と夫婦の収入からの蓄えであっても、確定的に特定の子に対する贈与となって、夫婦の共有財産にならない例もあることを認めています。正に、ケースバイケースの具体的妥当な判断です。

○現役家庭裁判所裁判官著作の日本加除出版発行「離婚調停」277頁には、「子ども名義貯金については、そのがどのような性質の預金であるか見極める必要があります。なお、調停においては、子ども名義預貯金がある場合、当事者双方にその取扱をどのようにするかを確認しておくとよいでしょう。財産分与の対象財産の範囲の確定の問題として、当事者の意向を尊重すべきでしょう。」と記述されています。