離婚後の子の福祉制度の基礎の基礎−児童扶養手当法と児童手当法
○離婚を考えるに当たって、離婚成立後、子どもの福祉制度によってどれだけ国費での補助を受けられるかが重要判断基準になる場合があります。稼ぎが悪くて家計費を入れない夫の場合、早く離婚して国から貰えるお金を貰った方が得だと言う場合などです。離婚相談で、離婚したら母子手当がどのくらい貰えるのでしょうかと言う質問を受けることがありますが、実は、母子手当を受給できる所得制限額等実務の細かいところは、多くの弁護士は余り勉強しておらず、私も同様です(^^;)。
○民主党政権下で、一時、子ども手当が支給されたとき、子どもが3人いる場合月額3万9000円にもなったので、別居中の夫婦でその取得権者はどちらかと言うことで争いなったことが結構ありました。典型的には子どもを連れて別居した妻ではなく、夫が取得し続け、妻がいったん決めた婚姻費用に子ども手当も追加して支払えと主張するのに対し、夫は子ども手当の受給権は扶養義務者の自分にあると主張して拒否した場合です。
○この夫婦間に新たな紛議をもたらした子ども手当、自由民主党と公明党の要望により、年少扶養控除を復活させ、法律の名称も児童手当法に基づく児童手当に戻し、平成24年3月31日をもって廃止されています。いわゆる母子手当は、児童扶養手当法に基づく支給で、児童手当法は、子ども手当の後釜で離婚を前提しないものですが、その違いも実は良く判っていません(^^;)。
○そこで先ず条文を確認します。
児童手当法第1条(目的)
この法律は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的とする。
児童扶養手当法第1条(この法律の目的)
この法律は、父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について児童扶養手当を支給し、もつて児童の福祉の増進を図ることを目的とする。
○児童扶養手当法は「父又は母と生計を同じくしていない児童」を対象とし、離婚等が前提ですが、児童手当法は「児童を養育している者」を対象としており離婚は無関係です。離婚して児童を扶養している人は、児童扶養手当の外に児童手当も受給できると思われます。支給要件の条文の概要は以下の通りです。
児童手当法第4条(支給要件)概要
児童手当は、次の各号のいずれかに該当する者に支給する。
1.次のイ又はロに掲げる児童(以下「支給要件児童」という。)を監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母
イ 15歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童
児童扶養手当法第4条(支給要件)概要
1.次のイからホまでのいずれかに該当する児童の母(父)が当該児童を監護する場合 当該母(父)
イ 父母が婚姻を解消した児童
ロ 父(母)が死亡した児童
この支給要件の条文全体は相当長くごちゃごちゃしており、全部読んで理解するのは弁護士でも大変です(^^;)。
○この児童扶養手当、一般に母子手当と呼ばれていましたが、実は上記の通り、父子手当でもあります。ウィキペディアでの解説によると、「平成25年5月末現在、109万769人が受給している。内訳は母子世帯99万3345人、父子世帯6万5415人、その他世帯3万2009人となっており、類型別では離婚を含む生別世帯81.7%、死別1.3%、未婚8.6%、障害者0.6%、遺棄0.3%、その他の世帯3%である。25年度国庫負担分予算額は1772億5000万円となっている。」とのことです。父も児童扶養手当を貰えるようになったのは、平成22年8月からで、長い間父は差別を受けていました。
○児童扶養手当の金額は以下の通りです。
児童が1人 - 月額4万1720円
児童が2人 - 月額4万6720円
児童が3人 - 月額4万9720円
以後 - 児童が1人増えるごとに月額3000円追加