親権の概観−基礎の基礎
○「自称」男女問題専門家の当事務所では、離婚・不貞等男女問題事件を多く扱っていますが、最近は男性からの依頼が多く、且つ、離婚に当たって親権を取りたいとの要望が増えています。そこでこの親権についての備忘録です。
親権に関する民法の条文は、第818条から837条まで20条にも渡って詳細に規定されています。
先ず親権の内容に関する重要な規定は以下の通りです。
第820条(監護及び教育の権利義務)
親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
第821条(居所の指定)
子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。
第822条(懲戒)
親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。
2 子を懲戒場に入れる期間は、6箇月以下の範囲内で、家庭裁判所が定める。ただし、この期間は、親権を行う者の請求によって、いつでも短縮することができる。
第823条(職業の許可)
子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
第824条(財産の管理及び代表)
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
○身上監護権
上記5条で規定する親権の内容の内居所指定権(820条)、懲戒権(822条)、職業許可権(823条)は身上監護権(820条)の具体的内容とされています。
○財産管理権
親権者は、上記身上監護権の他に、子の財産上の法律行為について法定代理人として代理権を有します(824条)が、子の身分上の行為については、15歳未満の子の氏の変更申立(791条)、認知の訴え(787条)、養子縁組の代諾権(797条)等法律で定められている事項についてのみ代理権を有します。
○親権行使の大原則は、「子の利益、子の福祉」に尽きる
親権行使の大原則は、「子の利益、子の福祉」であり、これに反する場合、次の規定が適用されます。
第834条(親権の喪失の宣告)
父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求によって、その親権の喪失を宣告することができる。
第835条(管理権の喪失の宣告)
親権を行う父又は母が、管理が失当であったことによってその子の財産を危うくしたときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求によって、その管理権の喪失を宣告することができる。