内縁関係の成否に関する参考判例−共同生活2
○内縁関係の成否に関する考え方と参考判例紹介を続けます。
内縁関係成立要件は
@「婚姻の意思」、
A「社会的に夫婦と認められている」、
B「事実上の夫婦共同生活の存在」
ですが、B「事実上の夫婦共同生活」は、必ずしも一定期間以上の継続的同居が必要とは限りません。内縁関係の不当破棄を理由とする慰謝料請求の場合、@婚姻意思の強度、A社会的認知度、B妊娠の有無等を総合考慮して、同居期間が短く,且つ、継続的同居でない場合でも内縁関係が認められる場合があります。
以下、福岡地裁昭和44年8月26日判決(判時557号90頁)要旨を紹介します。
先ず@結婚式を挙げていなくても、男女関係になった後に仲人を依頼し、第3者が女性が既婚者で子供も居ることを言って考え直すように聞かせても両者の結婚したい意思が変わらなかったことから内縁関係成立の合意が認められ、
次にA男女双方が住居を持ち、その住居双方に相互に行き来して男女関係を持ったもので、単一の住居において同棲生活をしていなくても、女性が戸籍上他人の妻で、保険外交員をしながら子供を養育しているとの事情からは、しばらく人目をはばかる気持ちを持つのもやむを得ず、「その他諸般の事情を総合すれば、本件のような生活の仕方も同居生活の一つの形態と認められ」内縁と評価出来る、
仲人の依頼後、6ヶ月程度経過した後に、女性が年上で,且つ、子供も居ることで,実父から結婚を強く反対されたことだけを理由に別れを提案することは、内縁関係破棄について何ら正当理由に該当しないので、不当破棄として損害賠償義務を負うもので、
その損害賠償金額については、金150万円の請求については、女性が男性の子を懐胎し、男性が認知の約束書面を作成したが妊娠6ヶ月で人工死産したこと、女性が生命保険会社営業所長として普通の生活をしていること、両者の男女関係のきっかけは、女性の方から男性を誘惑したものであること、同棲生活と評価される期間が6ヶ月と短いことから、請求額の4分の1相当額の金25万円を認容した
ものです。
○繰り返しますが、この判例の重要点は、内縁関係の成立要件としての夫婦共同生活は必ずしも単一の住居における同棲生活でなくても良いと認めたこと、仲人の依頼等強い婚姻意思の表明があり、更に女性の妊娠等の事実があると6ヶ月程度の同棲期間でも内縁の成立を認めたことです。
○但し、慰謝料金額については、女性が8歳も年上で且つ既婚者で子供が居たことや、女性からの誘惑を切っ掛けに両者の男女関係が生じたこと等、おそらく女性側としては全く納得できない理由で、150万円の請求が4分の1の25万円に減ぜられて認容された点も注意が必要です。内縁関係の不当破棄についての慰謝料金額は、さほど大きくないように感じられますが、別コンテンツで不当破棄慰謝料金額をテーマにしたものを紹介します。