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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

離婚全般

離婚時財産問題概要−某所講義案紹介

○平成21年5月23日、某所でご老人対象に、「熟年離婚」をテーマとする講義を行います。その講義案の中でメインを占める離婚時財産問題概要をご紹介します。特に年金分割部分は、正確性に相当問題があり、鵜呑みにしないで下さい。

1.財産分与
 財産分与とは、婚姻中妻の内助の功によって形成されてきた住宅・預貯金等の夫婦共有財産の清算です。
(1)不動産
例えば時価3000万円の土地建物があり、住宅ローンが1000万とすればその価値は2000万円です。夫が所有名義人で離婚に当たり夫が取得する場合、時価2000万円の2分の1相当金1000万円を財産分与として妻に譲らなければなりません。
(2)退職金
 問題になるのは退職金ですが、夫の定年が65歳で60歳時点の退職金が2500万円で婚姻期間中の退職金相当額が2000万円とすれば1000万円を妻に分与しなければなりません。
 60歳時点では退職金を受け取れませんので、65歳になって退職金2700万円を受領したときは内金1000万円を妻に支払うとの条件付き譲渡になります。
(3)預貯金・有価証券等
 預貯金も原則2分の1が分与の対象です。生命保険も離婚時解約返戻金相当額の2分の1が対象です。
(4)特有財産は含まれず
 夫が相続で得た不動産などは特有財産と言って財産分与対象にはなりません。例えば夫が親からの相続財産として1億円相当のアパートを所有していたとしてもこれは財産分与対象にはなりません。
 但し、夫が浪費家で、例えば夫がギャンブル等でサラ金に手を出しウン千万円の借金を作ったが、妻が倹約して預金をしており、その預金でサラ金債務を整理してアパート売却を免れた場合などは、妻が節約の努力等でアパートを売却しないで済んだので、その全部または一部を夫婦共有財産と認めて財産分与の対象とすることもあります。

(5)超多額の財産がある場合でも原則2分の1
 よく疑問が出されるのが、夫が事業家で大変な遣り手で20年間の婚姻期間中に10億円もの財産を取得した場合でも専業主婦の妻には2分の1の5億円の財産分与請求権があるのかというものがありますが、妻は5億円の財産分与請求権があると一般に考えられています。

※小室哲哉が8ヶ月結婚していた吉田麻美に支払う慰謝料が7億8千万円・・・。それはマンションの賃貸料と一人娘の養育費にあてられるってことですが、どうしてこんなに高いんでしょうか?
 財産分与と考えれば問題ないケースもあります。

2.年金分割
 ごく概算例を挙げます。正確ではないことを予めお断りします。
(参考)離婚時の厚生年金分割制度研修会1−基本復習

 年金制度は、以下の3階建ての体系となっており、離婚時年金分割の対象になるのは2階部分のみです。
【1階部分】 全国民に共通した「国民年金(基礎年金)」※ すべての国民が国民年金制度に加入
【2階部分】 国民年金の上乗せとして報酬比例の年金を支給する「被用者年金」(厚生年金、共済年金)
【3階部分】 「企業年金」(厚生年金基金、適格退職年金、確定拠出年金、確定給付企業年金)


 2階部分全部の半分を貰えるわけではありません。全年金の内婚姻期間中の分だけです。
例えば夫が20歳から厚生年金をかけ始め、30歳で結婚して60歳で離婚する場合は、給料がずっと変わらなかったとすれば全40年間の年金の内30年/40年で0.75相当部分です。
仮に40年分厚生年金が150万円とするとその0.75相当部分125万円の2分の1になり、62万5000円です。月額にすると約5万2000円です。実際は、給料は徐々にアップされますので、婚姻期間中厚生年金額が135万円位にになるかも知れません。その2分の1は67万5000円で月額約5万6000円です。

 夫は離婚しなければ150万円月額12万5000円と老齢基礎年金月額仮に6万円とすると月額合計18万5000円貰えるところ、離婚によって妻に月額金5万6000円分を分割すると月額12万9000円に減ります。
 妻は、自分の老齢基礎年金が月額仮に4万円とすると夫から分割を受けた金約5万6000円を加えた金9万6000円が合計年金額になります。

3.慰謝料
 婚姻破綻の原因について責任の重い方が軽い方に支払う精神的苦痛を慰謝するための損害賠償金、必ず女性側が取れるとは限りません。最近は不景気で男性側支払慰謝料は減少傾向。
 仮に妻の不貞行為で離婚になった場合など妻が夫に慰謝料を支払う立場でも財産分与の請求は出来ます。仮に慰謝料が200万円としても、財産分与額が1000万円あれば800万円は財産分与として請求できる。財産分与は共有財産の清算で、慰謝料は損害賠償であり別物。

※ある不貞妻の離婚相談例紹介

4.養育料・離婚後扶養料
 未成年者に対する生活費分担金が養育料で、熟年離婚では通常問題になりません。
 妻が無職、病弱等で離婚後の生活が困難な場合、或いは妻が障害者の子供を引き取った場合などは、妻及び障害者の子供に対する離婚後扶養料が問題になります。

5.離婚によって失うもの
(1)婚姻費用分担請求権。扶養料請求権。
(2)遺族厚生年金−先の2階部分全部の4分の3。150万円とすれば125万円。18歳未満の子供がいれば老齢基礎年金プラスアルファ。
(3)夫の全財産の2分1を承継できる相続人と言う地位。これが一番大きい。