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「セクハラを受けたと上司を退職に追い込んだ重〜いツケ」の話しを続けます。この裁判の争点は多岐に渡りますが、争点骨子は次の5点で2回に分けて記載します。
1 Aは,Bに対して,h10.8.1(事件日)に性的暴行を加えたか。Bは,外傷性癒着によって,h10.8.14から同年10月下旬までAと交際していたか。
2 Bが外傷後ストレス障害(PTSD)に罹患したというのは詐病か。
3 本件和解は,公序良俗違反で無効か,あるいは取り消し得べき瑕疵が存在するか。
4 Aの退職と被告の懲戒処分申入れとの間に因果関係が存在するか。
5 Aの損害
○争点に関する当事者の主張骨子は次の通りです。
1 性的暴行及び外傷性癒着の有無
Aの主張
Bの強姦等の主張はデタラメで首に傷を負ったとの主張は,事件日から8か月以上経ってから突然主張されたもので、Bは黙示的にせよ性的行為を承諾していた。和解協定書でもAは、一貫して性的暴行の不存在を主張していたし、BがPTSDを発症したとしても,外傷性癒着がBに生じる理由がない。
Bの反論
Aが事件日にBの自宅を訪問したとき、突然背後から抱きすくめ,外から見通しのきかない玄関ホールにBを押し出し、ジーンズと下着も引き下ろし、下腹部を手や口で長時間触り続け、これによってBは大きな精神的ダメージを受け、h10.8.4、Aに対して抗議したが,Aの好きだからとの説明に納得したと無理矢理自分に言い聞かせ,ひとりでいることの不安と恐怖をAと一緒に過ごす機会を増やすことで緩和するという,非合理かつ危険な行動へ追い込まれた。Aが男女関係と主張するものは,Aの性的暴行に起因してBに生じた外傷性癒着のせいである。
2 BがPTSDに罹患したというのは詐病か
Aの主張
Bは、事件日の「強姦未遂」とその後の「Aと被告の交際」の2つの事実を矛盾なく説明するため,詐病によってPTSDの認定を受け、強姦未遂,セクハラ,PTSD,外傷性癒着等を主張するため,故意に多くの虚偽の事実を主張。事件日の行為は性交には至っておらず,一度限りの短時間の行為で生命の危機を感じるような激しい暴力行為や身体の受傷などPTSDを発症するような状況ではなく、B医師もBがPTSDを明確に否定。
Bの反論
Bは,6人の精神医学,心理学の専門家からPTSDとの診断を受けているところ、B医師は,Bを一度も診察したことがなく,そのような医師の意見書には全く信用性がない。
3 本件和解は,公序良俗違反で無効か,あるいは取り消し得べき瑕疵が存在するか
Aの主張
Bは、ある日本総領事の妻殴打逮捕事件を利用し,「警察に告訴し,Aを逮捕させる。民事訴訟を起こす。マスコミに報道されてもかまわない。」と仲介者からAに聞かせて畏怖させ、逮捕の恐怖から、極度の不安の中で,和解協定が結ばれたものであり,それはBの強迫により締結されたもので,Bの行為は恐喝、詐欺に該当し、取消しが可能、また虚偽告訴罪、名誉毀損罪にも該当するもので、公序良俗に違反して無効でもある。
Bの反論
BがAから和解金として受領した1006万2500円は,Aの不法行為に関する損害賠償金であり,Bは,Aを強迫したことも,PTSDであると偽って欺罔したこともないし,Bの行為は,何ら刑罰法令に触れるものではない。