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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

判例紹介

長年夫婦同然の関係にあった女性に対する不動産譲渡

○夫が妻以外の女性に不動産を譲渡したり、保険金受取人と指定することは、不倫・私通関係を継続する目的のためとすると、民法第90条「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」との規定により、無効であると一般に解されています(東京高判平成11年9月21日等)。

○この公序良俗違反行為となるかどうかは時代の変遷等により相当解釈が異なって来るものですが、正当婚姻関係を保護するため夫婦間以外での男女関係維持を目的とする贈与等は国家は保護を与えないとするものです。例えば夫Aが妻Bが居るのに、愛人Cに愛人関係維持を目的として現金1000万円を贈与すると約束しながら履行しないためCがAに1000万円支払えとの訴えを提起しても認められません。

○しかしこの例でAがCに1000万円支払済みの場合に、A本人がこの贈与は公序良俗違反で無効だから返せと主張しても認められません。民法第708条(不法原因給付)で「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。」と規定されているからです。

○東京地裁平成18年7月6日判決(判時1967号96頁)では、上記の妻以外の女性に対する不動産についての死因贈与契約について妻と子供達が公序良俗違反で無効であると主張したのに対し、長年夫婦同然の関係にあった女性の場合は公序良俗違反とは言えず死因贈与は有効であると判示しました。

○このケースは夫Aが妻Bと昭和27年に結婚して3人の子供を儲けながら、昭和49年にC女と知り合い交際を始め、昭和51年からBと住んでいた本宅を出て、Cと同棲を開始し、27年間Cと夫婦同然の関係を続け、平成15年2月、長年のCの貢献に感謝し、自らの死後のCの生活を案じて所有土地の一部をCに死因贈与契約公正証書を作成して所有権移転仮登記をし、平成15年6月に死去したものです。

○Aの死後、妻Bとその子供達がCに対し、死因贈与契約は公序良俗に違反して無効なので土地につけた所有権移転仮登記を抹消せよと請求して訴えを提起しました。論点は他にも色々ありますが、裁判所は、このケースでのAとCの関係は不貞関係には当たらないとして公序良俗の主張を退けました。

○その理由はAとCが27年間公然と夫婦同然の生活を継続し、Bもその関係を認め、A・Cに野菜を送り届けまたおにぎりを作って持たせたり、AB間の子供達もC宅を訪れ宿泊し、Cと一緒に海外旅行に行ったりしており、更にAはBと子供達の生活費も送り続け、Aは2つの家庭を両立させていたことなどを挙げています。Aがこのような生活を送れたのは広大な土地の地主と言う資産家だったからで普通の稼ぎの男では困難と思います。