○文芸春秋特別版2月臨時増刊号で「全ての世代に送る男と女の波瀾万丈物語」とのキャッチフレーズ
「ああ、結婚!おお、夫婦!」を購入して斜め読みをしていたところ、変わる夫婦、変わらぬ夫婦の項目に、「結婚制度の目的」と言う表題の
評論家岸田秀氏寄稿がありました。私の備忘録として紹介します。
○哺乳動物は、一般に発情期に交合して、子を産み、子育てが終わると親子関係は解消され、それぞれ無関係に暮らすのに何故人類の男女は、結婚し、家族を形成するかについての説明する色々な説があるそうです。
・父権説
労働成果の蓄積の私有財産を得た男が、子に相続させるため確実に自分の子を産み育てる女と永続的関係を持つための制度。
・未熟児説
人類の子は極めて未熟な状態で生まれるので、女は長期間子育てにかかわり、その期間自活できないため孕ませた男が女を保護して逃げないようにするための制度。
・楽園説
極めて未熟な状態で生まれる人類の子は、成熟するまで長期間親の世話が必要であり、この親子関係で受けた愛情、保護、安心を享受できる関係−永遠の愛を享受する楽園を成熟した後に再現を夢見る制度。
・伴侶説
人間は孤独に耐えられない弱い存在で、愛と信頼で結ばれる伴侶と一緒に暮らして初めて安定と安心を得られるところ、この愛と信頼の関係を長い間生活を共にして築くための制度。
・自我説
本能に代わって自我を頼りとして生きる人類の自我形成での最初の自己の位置づけが親子関係の設定であり、この位置づけを安定させるための制度。
・分業説
男は、外で戦い、労働して賃金を稼ぎ、女は内で子を育て、家事に従事し料理を作るのに向いているので、男女それぞれが分業して協力する制度。
・秘蹟説
セックスは動物的な嫌らしい行為であるところ、これを清めるために神による婚姻の秘蹟を受け、この秘蹟を受けた男女のみにセックスが許されるための制度。
・社会秩序説
社会秩序維持のためセックスに頼るだけでは不安定な男女関係を安定させ、結婚披露宴で世間のシステムに組み込み、更に法律で縛って容易に解消できないようにする制度。
○他にも売春説等まだあるそうですが、岸田氏は、父権説、分業説、秘蹟説は時代後れで、楽園説は幻想に過ぎないとされ、それ以外の説が結婚制度の必要性を正当化するかは疑問である如く記述されています。男を離したくないばかりに子を殺す女が頻出している現在、女の性欲をどう組み込むかの難問を結婚制度は解決出来るのかとの疑問が印象的でした。