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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

親子

新生児取違での親子関係不存在確認請求が権利濫用とされた判決全文紹介1

○「新生児取り違え事件ニュース報道と過去の実際裁判例紹介」の続きで、平成21年6月11日東京地裁判決の控訴審である平成22年9月6日東京高裁判決(判タ1340号227頁、判時2095号49頁)を4回に分けて紹介します。
先ず主文と事案の概要ですが、一審判決は取り消されて、実子の請求は全て棄却されました。実子はこれを不満として最高裁に上告・上告受理申立しましたが上告不受理で確定したようです。



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主   文
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、第一、二審を通じて、被控訴人らの負担とする。

事実及び理由
第一 控訴の趣旨

 主文一項、二項と同旨

第二 事案の概要
 本件は、甲野太郎(本籍・《略》、以下「太郎」という。)とその妻である甲野花子(本籍同上、以下「花子」という。)との間の長男として戸籍に記載されている控訴人に対し、太郎・花子夫婦の子である被控訴人ら(控訴人の戸籍上の弟たち)が、同夫婦の死後、同夫婦と控訴人との間に親子関係が存在しないことの確認を求めた事案(以下「本件訴訟」という。)である。

一 事実関係
(1)太郎(大正13年2月8日生)と花子(昭和3年1月1日生)は、昭和27年5月15日、婚姻届出した。
(2)控訴人は、太郎・花子夫婦の長男として、昭和28年3月30日に出生した旨戸籍に記載されている。
(3)控訴人は、太郎・花子夫婦の長男として養育され、大学を卒業した後、会社勤めをし、30歳で妻松子と結婚して、両者間には長女竹子(平成元年4月25日生)、二女梅子(平成3年4月28日生)が生まれた。控訴人は、上記会社に20年ほど勤めた後、退職して、10年ほど太郎の不動産業を手伝ったが、その後、独立した。
(4)被控訴人甲野二郎(昭和29年4月13日生、以下「被控訴人二郎」という。)、被控訴人甲野三郎(昭和31年4月1日生、以下「被控訴人三郎」という。)及び被控訴人甲野四郎(昭和33年1月16日生、以下「被控訴人四郎」という。)は、いずれも太郎・花子夫婦の子である。
(5)花子は、平成11年4月2日に死亡した。
(6)花子の遺産については、既に遺産分割が終わり、控訴人は、現在の居住建物の敷地所有権を始めとする相続財産を取得した。
(7)太郎は、控訴人及び被控訴人らに対しそれぞれ不動産や預貯金等を相続させる旨の公正証書遺言(以下「公正証書遺言」という。)をした。これにより控訴人が取得する財産は、千葉県船橋市にある土地建物(以下「船橋の家」という。)等である。
(8)太郎は、平成19年10月7日に死亡した。これにより、公正証書遺言の効力が発生した。
(9)被控訴人らは、平成20年7月2日、控訴人に対し本件訴訟を提起した。
(10)被控訴人らは、原審において、控訴人と被控訴人らとの間に両親を同じくする兄弟関係があるか否かの鑑定(以下「本件鑑定」という。)を申し立て、控訴人は、本件鑑定の採用を争わず、本件鑑定は採用された。
(11)本件鑑定において、控訴人と被控訴人らとの間には、生物学的な父を同じくする兄弟関係、生物学的な母を同じくする兄弟関係いずれも存在しない旨の鑑定結果が得られた。
(12)原審は、平成21年6月11日、本件鑑定の結果に基づいて、控訴人と太郎、控訴人と花子の間にはいずれも親子関係が存在しないことを確認する判決を言い渡した。
(13)控訴人は、原判決を不服として、控訴を提起した。