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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

その他交通事故

統合失調症既往症患者頚随損傷被害交通事故損害賠償請求事件顛末3

○「統合失調症既往症患者頚随損傷被害交通事故損害賠償請求事件顛末2」を続けます。
16歳で統合失調症を発症し、入退院を繰り返し、無収入であったAさんが40歳で交通事故に遭い、頚随損傷で頚から下が動かなくなり、別表第一第1級後遺障害を認定されるも、自転車で赤信号無視の過失がありました。常時介護が必要な最重症後遺障害で自賠責保険金限度額は4000万円ですが、既往症減額・過失減額が大きく予想される事案でした。

○仮にAさんが健常者で過失もない場合の裁判基準損害賠償額が3億円認められるとしても、先ず精神障害で労働能力無しと認定されると既往症後遺障害等級が第3級となります。この場合、休業損害・逸失利益が全く認められません。これだけで1億円前後減額になります。慰謝料金額も既往症分を減額されると2000万円程度減額になります。減額後の損害額が仮に1億8000万円として、赤信号無視過失割合基準の85%が減額になると、最終的にAさんが取得できる損害賠償額は1億8000万円×0.15=2700万円にしかなりません。

○加害者側任意保険会社が、Aさんの場合、裁判基準損害額は、どう転んでも自賠責保険限度額4000万円以内に収まるので、一切支払をしないと明言して示談交渉自体を拒否したのも、事案を形式的に見る限り理由があります。私は自賠責保険請求手続から受任しましたが、先ず事故の実況見分調書から詳細に点検をしました。すると加害者運転者は、衝突直前でAさんの自転車を発見し、急制動をかけるいとまもなく時速30㎞の速度で自転車に激突し、Aさんを自転車もろとも約8m前方に跳ね飛ばしたことが判りました。

○加害者運転者は、突然、目の前にAさんの自転車現れたとも述べており、衝突直前まで前方を全く見ておらず、脇見運転であることが明らかでした。さらに交差点は、仙台で最も大きいと言われている郊外のバイパスの広い交差点で、見通しが大変良いことが調書添付図面だけでも明らかでした。

○そこで私は、事故日と同じ土曜日の事故発生時刻午前7時30分の30分前午前7時頃、事故現場交差点を訪れ、加害車両と同じAさんの妹さん所有軽自動車に乗車して、加害車両の事故時の進行と同じように繰り返し走行し、道路状況、自動車通行量等を確認しました。更にAさんの妹さんに事故当時のAさんと同じような色合いの服装をして自転車で事故のあった交差点を走行して貰い、走行車両からどのように見えるか確認しました。

○これらの状況を全てビデオに収めて事務所に持ち帰って繰り返し再現し、この事故態様では、Aさんの過失はどう見ても5割以上にはならないと確信しました。Aさんの過失が5割程度と認定されれば、自賠責保険においては過失割合減額が適用になりません。自賠責保険は被害者過失割合が7割に達して始めて2割減額から始まるからです。そこで加害車両の事故直前までのビデオシーンを、0.5秒ごとの画面キャプチャーで連続写真とし、各画面毎の視野に普通に前方注視していれば、例え赤信号無視自転車であろうと容易に発見して事故を避けることが出来ることを説明する報告書を作成し、自賠責保険会社に提出しました。