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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

任意保険会社への直接請求

謹告!約款6条A(3)での保険会社への直接請求訴訟に黄色信号2

○「謹告!約款6条A(3)での保険会社への直接請求訴訟に黄色信号」を続けます。
平成16年10月の事故で右眼を負傷し、1.5あった視力が0.05に低下するも自賠責から器質損傷がないことを理由に後遺障害と認められず、平成17年12月、被害者の加害者に対し訴えを提起して、第二審仙台高裁で平成22年10月に解決するまで5年近い歳月を要しました。この裁判は、形式上は被害者から加害者への訴えでしたが、実質は、顧問医の視力低下を詐病(見えないふりをしている)と断定する意見書を振りかざしての加害者側任意保険会社との争いでした。

○この訴えの間、加害者は被害者に申し訳ないと、盆暮れの贈答と挨拶を欠かさず、謝罪し続けました。これに対し、被害者は、私はあなたに何の恨みもない、あなたの誠意は良く判っているので、もう盆暮れの挨拶もせずに結構です、兎に角、私の真の敵は、私を詐欺師扱いにする保険会社ですと言い続けました。この裁判では、加害者は保険会社に視力低下で生業の大工仕事が出来なくなり経済的苦境に陥った被害者に十分償って欲しかったはずです。

○然るに保険会社は加害者の意向とは別に、被害者の視力低下を否認し、詐欺師呼ばわりして厳しく争い続けました。この裁判の経過で、交通事故訴訟の真の当事者は被害者と保険会社であると痛感した私は、自動車保険約款を精読して、保険会社に直接請求する方法を検討しました。その結果が、このHPでの平成18年9月11日初稿「被害者の保険会社に対する直接請求−可能な3要件」以下の記載です。

○そして平成18年11月9日初稿「加害者への損害賠償請求不行使の書面による承諾」に「『加害者への損害賠償請求不行使の書面による承諾』を行い、保険会社への直接請求の訴えを提起する準備中」と記載し、平成19年1月19日、共栄火災海上保険株式会社に対する訴えを第一号として、以来、交通事故に基づく損害賠償請求訴訟は、原則として、約款6条A(3)による保険会社への直接請求方式で行い、平成26年4月現在まで50数件この方式での訴えを提起してきました。

○ところが、直接請求方式第8件目平成20年12月18日提起A保険株式会社に対する訴えと、第16件目平成21年7月14日提起D共済組合連合会に対する訴えの2件のみが、保険会社に対する直接請求は、これまでの交通事故訴訟の常識を覆し、交通事故訴訟のあり方の根本を覆すもので到底認められないと激しく争われました。後者は、平成22年6月8日仙台地裁判決となり直接請求が認められて決着しました。

○前者は、脳脊髄液減少症の存否が激しく争いになる内容であり、保険会社側顧問医意見書作成や裁判中の被害者自賠責後遺障害等級申請、被害者側主治医意見書作成、直接請求可否論争が繰り返し等で審理に長い時間がかかりました。そして審理継続中の平成24年9月、自賠責保険会社も兼ねる任意保険会社から後遺障害等級14級が認定されて速やかに自賠責保険金75万円を支払われました。裁判官も交替し、3人目の裁判官が平成24年12月に至り、加害者本人に対する消滅時効の問題点を提起しました。

○そこで直接請求可否論争に加えて消滅時効完成有無論争も生じました。被害者としては平成24年9月に自賠責後遺障害認定がなされており、また、加害者保険会社への請求は当然加害者自身に対する請求と同視されて加害者に対する消滅時効は中断されており、何ら問題にならないと主張しました。ところが、任意保険会社は平成25年4月に至り初めて加害者に対し請求がないとして、加害者に対する損害賠償請求権の消滅時効を援用するとの主張をしてきました。

○この事件は平成17年11月と平成18年7月の2件の事故が競合して脳脊髄液減少症が発症したと主張し、2件の加害者側任意保険会社と自賠責保険会社を相手とする裁判で、極めて難しい事実認定が要求される事件でした。しかし、平成24年12月に裁判官から消滅時効問題を提起されるまでは消滅時効について全く話題にならず訴訟が進行し、また、平成24年9月に自賠責後遺障害認定がなされて自賠責保険金も支払われ、何より保険会社に対する請求が加害者本人に対する請求と同視されると考え、よもや消滅時効が認められるとは考えませんでした。

○ところが平成25年10月11日仙台地裁判決は、脳脊髄液減少症と事故の因果関係を否認し、後遺障害等級14級として約521万円の損害を認めるも、保険約款第25条で損害賠償請求権者の被保険者に対する損害賠償請求権が時効によって消滅した場合は、保険会社に対する直接請求権は行使できないと約定されていることを理由に本件では加害者本人に対する損害賠償請求権が時効消滅しているとして、保険会社に対する請求を棄却しました。
私にとっては正に驚愕の内容で、いまだ裁判確定していませんが、お客様のご快諾を得ましたので、別コンテンツでこの判決全文を紹介し、私なりに解説します。