本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

交通事故関連傷病等

脳脊髄液減少症篠永診断基準と吉本批判紹介

○むち打ち損傷による脳脊髄液減少症についての篠永正道医師を中心とする肯定派の診断基準とこれに対する吉本智信医師ら懐疑・否定派医師の医学論争について私なりにまとめて脳脊髄液減少症での後遺障害認定を求める訴訟の一つで使用したものを紹介します。参考文献は、「あなたの『むち打ち症』は治ります! 各科の専門医も立証 脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の決定的治療法」、「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」、「脳脊髄液減少症データ集Vol.1、同Vol.2」、「脳脊髄液減少症の診断と治療」、「低髄液圧症候群 ブラッドパッチを受けた人、または、これから受ける人へ」です。これらの書籍はむち打ち損傷での脳脊髄液減少症を後遺障害と主張する裁判では必須です。

********************************************

3 篠永医師らの診断基準について
(1)篠永医師らの発見

 篠永医師(国際医療福祉大学熱海病院脳神経外科)は、平成12年に至り、交通事故後の外傷後症候群の原因のひとつが髄液漏出との疑いを強くし,患者の協力を得て,造影脳MRI,RIシンチグラフィーを行い,髄液漏出・減少の所見が見られる症例がブラッドパッチ治療で症状改善することを発見した(甲○)。
 同医師は平成15年に「神経外傷」に「外傷性低髄液圧症候群(髄液減少症)の診断と治療」との表題で論文を発表し,さらに同年テレビ朝日の「ニュースステーション」で報道されてから患者数が急速に増加した。
 篠永医師は,この見解に賛同する医師らと平成16年(2004年)2月から脳脊髄液減少症研究会(第1回)を開催し,その後年1回のペースで研究会を開催し,これらの研究会の成果として,平成18年(2006年)「脳脊髄液減少症ガイドライン2006」を,平成19年(2007年)「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」(甲○)をそれぞれ発表した。

(2)篠永医師らの診断基準
 篠永医師ら脳脊髄液減少症研究会の医師らはそれまでの臨床経験から,上記「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」(以下単に「ガイドライン2007」とする)で脳脊髄液減少症の診断基準を発表した。
※その診断基準は、「私なりの脳脊髄液減少症概観紹介」に記載していますので、省略。

(3)篠永医師らの診断基準は臨床の経験に基づくものである点について
 このガイドライン2007にまとめられた篠永医師らの診断基準は,約10名の全国に散らばる医師らの,約3000症例に及ぶ臨床の経験から導き出されたものである。
 このガイドラインに基づき脳脊髄液減少症と診断された患者に対してはブラッドパッチ治療が行われているが,程度の差はあれ7割の症状が改善されているという実績に基づくものである(甲○)。
 篠永医師らは平成16年(2004年)に脳脊髄液減少症研究会を開催し,その後年に1回のペースで研究会が開催され,平成18年(2006年)の暫定ガイドラインの策定を経て,このガイドライン2007が作られるに至った(経緯については甲○)。
 この間同医師らは,「脳脊髄液減少症データ集Vol.1」(甲○)及び「同Vol.2」(甲○)を発表するなど,具体的な症例をもとに,現実の臨床経験を踏まえた検討を重ねてきている。
 したがってこのガイドライン2007は平成16年以降の,篠永医師ほか日々臨床の現場に立つ医師らにより,最新の医療技術や医療機器に基づく治療や臨床例に基づいて作成されたものである。この点で後に見る吉本医師の立論とは根本的に異なるものである。

4 篠永医師らの診断基準に対する吉本医師の批判
 上記の篠永医師らの診断基準に対しては神経外傷学会や整形外科分野から強い批判が出された。特にむち打ち損傷に基づく脳脊髄液減少症発症を理由とする損害賠償の訴えに対し損保側が猛反発をした。
 当初保険会社側顧問医らからは,むち打ち損傷程度で強固な脊髄の硬膜が破れるはずがないといったの趣旨の意見書が提出されていた。
 その後,このような保険会社側の主張を理論づけるものとして,平成18年に至り,関東中央病院脳神経外科吉本智信医師が「低髄液圧症候群 ブラッドパッチを受けた人、または、これから受ける人へ」との書籍を刊行し,上記の篠永医師らの診断基準を正面から批判し,これ以降,保険会社の主張が有利な状況となった。
 吉本医師の立場は,上記の篠永医師らの診断基準がRIシンチグラムが最も信頼のおける画像診断法であるとしている点を批判するものである。
 すなわち,RIシンチグラムの画像所見で髄液漏れが見られたとしても,
@穿刺の失敗で硬膜外腔に漏れた可能性がある,
A漏れが明白でない早期膀胱内集積像の場合は腰椎穿刺の針穴から漏れたことが原因である,
Bヒトにおいても脊髄からの髄液吸収があるから髄液漏れと確定診断できない,
としてRIシンチグラムでの画像所見を脳脊髄液減少症の診断基準とすることを批判する(甲○)。