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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

面会交流・監護等

第三者に対する子の引渡請求についての参考判例2件紹介

○諸般の事情で、実親が子供を第三者に預け、しばらく時を経て、子供を育てられる環境が整って、この返還請求をしても、しばらくの間監護・養育していた第三者は、実親に対し、子を返してくれないことが良くあります。この場合、実親は子を預けた第三者に子の引渡を請求できるかどうかについての質問がありました。関係判例を調べると参考になる判例が2件出てきましたので紹介します。

○先ず実親の第三者に対する子の引取請求を認めた昭和40年3月26日東京家裁審判(家月17巻5号71頁、判タ187号215頁)です。

主  文
相手方はA(昭和33年4月27日生)を申立人に引渡せ

理  由
 申立人は主文同旨の審判を求め、その理由として次の(一)ないし(四)のとおり述べた。
(一)、申立人はBと昭和24年9月婚姻し昭和25年3月10日長女C、同27年1月19日二女D、同33年4月27日長男Aを儲けた。
(二)、右Bは昭和29年頃からEと知合い家庭を顧りみないようになつたので、申立人はBと別居するの已なきに至り、昭和35年6月18日札幌家庭裁判所室蘭支部に於て、次のような調停が成立した。すなわち、申立人とBは別居し、申立人が右一男二女を引取り養育監護すること、Bは申立人に対し生活費として昭和35年7月以降毎月金6千円を支払うこととする調停が成立した。
(三)、申立人は昭和40年1月病気したので、右一男二女を一時、北海道稚内の申立人の姉に預けたところ、Bは申立人に無断で同年3月3日長男Aを連れ出し前記典子の父親である相手方に預けたものである。
(四)、申立人は、Aが4月から室蘭市の小学校に入学するので、急いで上京し相手方にAの引渡方を求めたがBから依頼されたからと称し応じないものである。

 よつて案ずるに、申立人、相手方及びBの各審問の結果と家庭裁判所調査官伊藤よねの報告書によれば申立人の主張する事実をすべて認めることができる。右事実によれば、申立人とBとは、前記調停において、別居のためその子女を共同して監護することができないので、その親権のうち子の監護につき申立人においてこれをなすべく協議したものと認められる。かような協議は勿論適法であつて、別に協議し直すか、民法第766条に準じ家庭裁判所の処分によらない限り、Bは監護の権能を行使し得ないものと考えざるを得ない。

従つて、Bが相手方にAを引渡しその監護を委託したとしても、相手方は正当に監護する権能をうるものでないので、相手方がAを留めおくことは、申立人のAに対する監護を妨げているものというほかない。かような場合に、申立人は、そのAに対する親権の行使を相手方が妨げているものとして相手方に対し妨害排除を求めうることは勿論であるが、相手方が事実上Aの監護をなしていることを基礎として、民法第766条に準じて、家庭裁判所に対し子の監護をすべき者を変更し、監護について相当な処分を求めることもできるものと考えざるを得ない

しかして、本件申立は右相当な処分を求めるものと解せられるところ、前記各審問の結果によれば、Aが申立人の許にあつてその監護を受けることが、相手方或はBの許にあつてその監護を受けるよりも、よりAの幸福に副うものと認められるし、また、Aは昭和33年4月27日生で未だ自己の意思で相手方に留つているものでないことが認められるので、申立人をAの監護者とすることが相当であり、相手方にAを申立人に引渡さしめることが相当であると考えられる。しかして、前記調停において、申立人がAの監護者であることが明らかであるので、主文でこれを明らかにする要のないものと認め、本件申立を相当と認め主文のとおり審判する。
 (家事審判官 脇屋寿夫)


○次は、未成年者の祖父母による子の監護者指定の申立てを,家事審判事項に当たらないとして不適法却下し、未成年者の親権者母による祖父母を相手方とする子の引渡しの申立てを,家事審判事項に当たらないとして不適法却下した平成20年1月30日東京高裁決定(家庭裁判月報60巻8号59頁、判例タイムズ1284号153頁)です。

主  文
1 原審判中相手方らの本件申立てに関する部分を取り消す。
2 相手方らの本件申立てをいずれも却下する。
3 その余の本件抗告を棄却する。

理  由
第1 抗告の趣旨及び理由

 本件抗告の趣旨及び理由は,別紙即時抗告申立書(写し)記載のとおりである。

第2 事案の概要
1 本件は,①本件未成年者の祖父母である相手方らが,相手方らと同居している本件未成年者について,その監護者を相手方らと指定することを求め,これに対し,②本件未成年者の親権者である抗告人が,相手方らに対し,本件未成年者を引き渡すことを求めた事案である。
2 原審判は,本件未成年者の監護者を相手方らと定め,かつ,抗告人の本件申立てを却下する旨の審判をした。
3 抗告人は,原審判の上記判断を不服として本件抗告を申し立てた。

第3 当裁判所の判断
1 職権をもって判断する。
(1)家庭裁判所は,法が定める事項について審判を行う権限を有する。
家事審判法第9条第1項が家庭裁判所の審判事項を定めるほか,同条第2項により,家庭裁判所は,他の法律において特に家庭裁判所の権限に属させた事項についても,審判を行う権限を有する。上記のとおり,法により家庭裁判所の審判事項として定められ,及び審判を行う権限を特に付与された事項以外の事項については,家庭裁判所は審判を行う権限を有しないのであり,家庭裁判所に対して上記の事項以外の事項について審判の申立てがされた場合は,これを不適法として却下すべきである。

(2)相手方らの申立てについて
 相手方らは,家事審判法第9条第1項乙類第4号を根拠として相手方らを本件未成年者の監護者として指定することを求める申立てをしているが,本件記録によれば,本件未成年者には母である抗告人と父とがあり,その協議離婚に際し両名の協議により母である抗告人を本件未成年者の親権者と定めたこと,相手方らは抗告人の両親であり,本件未成年者の祖父母であって本件未成年者を現に監護する者であるが,未成年後見人その他の法令に基づく権限を有する保護者ではないことが認められる。

 家事審判法第9条第1項乙類第4号は,その文言(「民法第766条第1項又は第2項(これらの規定を同法第749条,第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護者の指定その他子の監護に関する処分」)及びその趣旨によれば,民法の上記各規定が,未成年の子の父母が離婚その他婚姻関係を解消するに際し,両者の間の未成年の子の監護者を指定し,及び監護に関する処分をするについて家庭裁判所がこれを定める旨を規定していることを受け,上記のとおり審判事項を定めているというべきであるから,本件のように,未成年の子に父母があり,その一方が親権者として定められている場合に,未成年の子の父母以外の親族が自らを監護者として指定することを求めることは,家事審判法第9条第1項乙類第4号の定める審判事項には当たらないというべきである。

 その他,同法その他の法令において上記の場合に未成年の子の父母以外の親族が自らを監護者として指定することを求めることを家庭裁判所の審判事項として定める規定はない。したがって,相手方らの本件申立ては,法により家庭裁判所の審判事項として定められていない事項について家庭裁判所の審判を求めるものというほかはないから,不適法として却下すべきである。

(3)抗告人の申立てについて
 抗告人は,家事審判規則第53条を根拠とし,相手方らに対して本件未成年者を引き渡すことを命ずる旨の審判を求める申立てをしているが,同条は家事審判法第9条第1項乙類第4号が上記のとおり規定していることを受け,家庭裁判所が,同号に基づき子の監護者の指定その他子の監護について必要な事項を定め,又は子の監護者を変更し,その他子の監護について相当な処分を命ずる審判において,子の引渡しを命ずることができる旨定めているのであり,家事審判法第9条第1項乙類第4号が上記のとおり定める審判事項以外の事項を家事審判規則第53条が審判事項として定める趣旨のものではないことが明らかである。

 その他民法及び家事審判法が審判事項として定める事項以外の場合に,親権者が未成年者を現に監護する者に対して家庭裁判所が審判により未成年者の引渡しを命ずることができる旨を定める法令上の規定は存しない。したがって,抗告人の本件申立ては,法により家庭裁判所の審判事項として定められていない事項について家庭裁判所の審判を求めるものというほかはないから,不適法として却下すべきである(本件未成年者の親権者である抗告人が相手方らに対して未成年者の引渡しを求めるには,所定の要件を満たす限り,人身保護法及び人身保護規則が定める所定の手続により救済を求めるべきである(最高裁昭和61年(オ)第644号同年7月18日第二小法廷判決・民集40巻5号991頁参照))。

2 以上と異なる原審判は法令に違反することが明らかであるから,原審判を取り消して本件各申立てを却下すべきところ,抗告人の本件申立てについては,原審判が結論においてこれを却下しているので,原審判中抗告人の本件申立てに関する部分については抗告人の本件抗告を棄却することとし,原審判中その余の部分(相手方らの本件申立てに関する部分)についてはこれを取り消して相手方らの本件申立てを却下すべきである。

3 よって,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 濱野 惺 裁判官高世三郎 西口 元)
〔編注〕 別紙は省略した