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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

アンカップリング通信

(番外編)突然、妻が家で!

以下、アンカップリング通信61号の「突然、妻が家出!」Wさんの記事を読んでの私の感想です。

Wさんは、突然、妻に家出され、狼狽してアンカップリング通信に投稿して意見を求めてきました。それに対する私の意見が以下の通りのものです。

初めに
男女紛争を扱う法律専門家の端くれとしてWさんの記事を読んでの感想を申し上げます。Wさんのお子さまを思い、真剣に奥様との修復を努力されているお姿には心から敬意を表します。
 しかしこれから述べることはWさんには相当辛辣な内容になることを最初にお詫び申し上げます。

夫婦破綻の究極原因
 私も一〇数年前に離婚を経験し、更に業務として何百組もの破綻夫婦を見続けてきた結果、夫婦破綻の原因はただ一つと思うようになりました。
 それは「相手を見ていなかった」と言う一言に尽きます。相手が「何を考え、何を求めている」かについて全く無頓着になり、不注意すぎたと言うことです。
しかも殆どの方は「相手をよく見ていなかった」ことに気付いていません。特に男性に多いのですが、相手から離婚を切り出されて寝耳に水と驚きます。Wさんの場合も「見ていなかった」典型例と思います。

夫婦破綻の程度
 相手から「離婚」を切り出された場合、それが「寝耳に水」の場合、「何故離婚?自分に離婚理由などない。もしていない」と猛然と反発するのが一般です。
しかし、私から言わせると、相手を見ていなかった程度、夫婦関係破綻の程度は、「離婚理由などない」と反発する場合程、重症です。「酒、ギャンブル、浮気、借金」等の明白な原因がある方が、破綻の程度は軽症です。
明白な原因がある場合は、その原因を除去することにより修復の可能性もありますが、明白な理由がない場合、破綻原因除去の方法がないからです。
 世の中には、酒、ギャンブル、浮気、借金何でもござれでも、妻の気持ちをしっかりと捉えて離さない夫も大勢います。
ところが、自分は、酒も、ギャンブルも、浮気も、嫌われるようなことはしていない「にもかかわらず」嫌われてしまったとすれば、これはどうしようもありません。 離婚理由がないという「理屈」によって嫌いという「感情」を動かすことは絶対に出来ません。
 
Wさんも重症事案です
 私はWさんの投稿を読み、これは重症だなと感じました。Wさんは、奥様が自身のことを「一切」振り返らないことが悲しいと言います。ズバリ申し上げます。奥様が自分のことを「一切」振り返らないのは、Wさんに対する好意的気持ちが「全く」失われているからです。
 奥様にWさんのことが好きで気に入って貰いたいとの気持ちが少しでもあれば振り返ります。ですからWさんの修復の努力が実を結んで奥様がWさんをもう一度好きになり、気に入って貰いたいと言う心情になれば自ら進んで自己の欠点に目を向け、反省するようになるでしょう。
 厳しい言い方で恐縮ですが、Wさんは、奥様が自己を「一切」振り返らないほどにWさんを嫌いになったことを心から反省しないと、奥様の気持ちは取り戻せないでしょう。

僅かに修復の可能性あり
 しかし、私はWさん夫婦にはごく僅かですが、修復の可能性もあるのではとも思います。
 それは、Wさんが奥様が自分を振り返らないことを「悲しい」と表現しているからです。かような場合、殆どの人は相手を「けしからん」と言って怒り、非難します。怒り・非難の感情で接した場合、修復の可能性は全くありません。
 Wさんの文面からは、多少疑問も感じますが、奥様が振り返らないことを心から悲しいと思い、非難の感情を持たずに接し続けることが出来れば奥様の気持ちを取り戻すことが可能かも知れません。これは至難の業ですが。

Wさん夫婦関係修復の要件
繰り返しますが、Wさんが奥様の気持ちを取り戻す要件は、第一に重症であることの強い自覚を持つことです。第二に自己の欠点を振り返らない奥様を怒り・非難の感情を持って理屈で説得しようとは決して思わないことです。
 イソップ物語の北風と太陽の話は人間関係学の最高傑作ですが、Wさんは、太陽となって奥様が自発的に振り返るように、肩の力を抜いて、暖かく奥様を包み込んでください。
 それでも奥様の気持ちは容易には戻らないでしょう。Wさんの努力も、結局徒労に終わる可能性もかなり大きいと思います。万が一戻ってきたら見つけものだ位の軽い気持ちでじっくり努力することが大事でしょうね。

私の場合
私の場合は、当時若く、右の二つの要件についての自覚が不足していたこともあり、前妻の気持ちを取り戻せませんでした。
 実際の離婚のストレス、血を分けた子供との別れの辛さは予想を遙かに超えていました。オーバーな表現すると、のたうち回ってもがき苦しみ、理不尽(当時の考えで今はそう思っておりません)に去っていった妻を逆恨みする時期がしばらく続きました。
 しかしその後の展開等考えると、前妻との結婚を無理に継続していたなら、未だに精神的余裕のない生活を強いられていたと確信しており、離婚は正解だったとも思っております。

最後にお伝えしたいこと
 最後に申し上げますが、Wさんは、文面から大変常識的な節度ある立派な方とお見受けしました。かようなWさんが、長期間真摯に努力しても奥様が気持ちを戻さない場合、奥様の性格或いは夫婦間の根本的相性に問題がある場合も相当考えられます。ある程度期間を経た後、親戚等のご意見も参考にされた方が良いかとは思います。
 離婚と子供との関係は、今回はスペースがなく触れませんが、私は基本的には、夫婦のいがみ合いを見せながら育てるよりは、離婚して育てる方がベターと考えております。
(四〇代弁護士離婚経験者)(平成15年 6月11日記)