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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

財産分与・慰謝料

扶養的財産分与として妻にマンション賃貸を命じた例2

○「扶養的財産分与として妻にマンション賃貸を命じた例1」の続きです。
この平成21年5月28日名古屋高裁判決(判時2069号50頁)は、扶養的財産分与として妻にマンション賃貸を命じた点だけでなく、離婚事件における重要論点について多くの示唆に富む大変勉強になる判例で私の備忘録として論点毎にポイントを整理しておきます。

○事案概要は以下の通りです。
・夫B(s39.10.7生まれ、判決時44歳)と妻A(s38.2.20生まれ判決時43歳)は平成6年10月5日に結婚し、長女C(h8.7.1生まれ、判決時12歳)がいる。
・平成6年10月に居宅用マンションを2835万円で購入、頭金約350万円をAの特有財産から支払いAの持分1000分の117とし、残りをBの持分として残代金についてB名義住宅ローンを組む
・平成15年5月頃からBの挙動が怪しくなり始め、ラブホテルの割引券・カード等がBの持ち物から大量に発見され、同年12月頃以降BはAに一方的に離婚要求をして、平成16年3月Bが居宅マンションを出て別居。
・BA夫婦の婚姻破綻原因は、Bの主張では、Aの性格偏向、Bに対する愛情喪失、Bの良心との不仲等
Aの主張では、一審では婚姻破綻を否定、仮に破綻しているとしてもその原因はBの同居義務放棄、不貞行為等にありBは有責配偶者に該当し離婚請求は許されない。
・一審判決は、Bの主張をほぼ認め、Bの不貞行為は相手が特定されておらず,仮にあったとしても婚姻関係破綻とは因果関係がないので有責配偶者に当たらないとして離婚を認容し、居宅マンションは所有権全部をBに帰属させた上、BからAに300万円を分与させると判示。
・Aがこれを不服として控訴し、Bの不貞行為・悪意の遺棄を理由とする離婚・損害賠償・養育費・居宅マンション賃借権確認、財産分与・年金分割等を請求


○一審段階では、妻Aは婚姻の破綻自体を争い,且つ、仮に破綻があったとしても有責配偶者として離婚請求は許されないと離婚自体を激しく争いました。そのため離婚を前提とする慰謝料請求・財産分与請求についてはAとしての主張は出来ません。これは大変危険な争い方であり、一審の結論は殆ど夫Bの主張通りに認められ、Aにとっては離婚は認められ且つ財産の保障も不十分な,正に「踏んだり蹴ったり」の判決だったと思われます。

○このように破綻が明確な事案についても、妻Aの立場では何としても離婚は認めたくないとして、離婚を前提とした主張をしない例は,実務では良くありますが、本件での一審判決のように殆ど夫B主張に沿った結論になったように妻Aにとっては大変危険な戦法です。一審の代理人としては妻Aの希望を良く聞いた上で、その危険性を十分に説明しておく必要があります。しかしながら、このように夫に女の影が感じられると、十分説明しても、妻は、意地になって、何としても離婚は認めないと説明に耳を貸さないことが多く、代理人としては困った立場になることが多くあります。