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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

養育費・認知

児童手当・子ども手当と養育費・婚姻費用との関係2

○「児童手当・子ども手当と養育費・婚姻費用との関係1」を続けます。
AB夫婦が、前妻Bが子ども3人の親権者として離婚し、前夫Aが子供1人につき4万円の計12万円を前妻Bに養育料として送金していたところに、前妻Bが手当3人分として3万9000円を受領することになった場合、前夫Aとしては、養育料を1人4万円からせめて3万円に減額できないものでしょうか。

○子ども手当の趣旨は、平成22年度における子ども手当の支給に関する法律第1条に「次代の社会を担う子どもの健やかな育ちを支援」として、同法第2条受給者の責務として「前条の支給の趣旨にかんがみ、これをその趣旨に従って用いなければならない。」と規定されている以上、子ども手当の支給は、養育費額算定の事情変更には該当せず養育料減額理由にはならないと思われます。もしこれを理由に養育料減額が認められたのでは,子ども手当は結果として養育料支払義務者即ち父(前夫)のための手当になってしまうからです。

○次にAB夫妻が数年前から妻Bが子供を引き取って養育する別居中で、家庭裁判所での婚姻費用分担調停で、夫Aが子供3人を養育している妻Bに対し婚姻費用として毎月15万円を送金している場合、先ず子ども手当受給権者は、ABいずれかという問題があります。
受給権者については平成22年度における子ども手当の支給に関する法律第4条に規定されていますが、別居中の場合は、次の条項に該当します。
三 子どもを監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母であって、父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない子どもを監護し、かつ、その生計を維持するもの
非常に判りづらい規定ですが、ポイントは、「監護し、かつ、その生計を維持するもの」です。父母別居の場合は、基本的には子どもと同居の世帯主の母Bですが、この条項により、子どもの「監護し、かつ、その生計を維持するもの」が該当します。そこで別居中の父Aが、婚姻費用を負担している場合、振込証等でその負担を証明することで「監護し、かつ、その生計を維持するもの」と認定され、子ども手当受給権者となります。

尚、二 父母に監護されず又はこれと生計を同じくしない子どもを監護し、かつ、その生計を維持するもの
の規定により、子どもの父母でなくても「監護し、かつ、その生計を維持するもの」に該当すれば子ども手当受給権者になるようです。

○夫Aが児童手当を受給している場合、厚労省HP子ども手当一問一答によると、「子ども手当の支給を受けるためには、お住まいの市区町村(公務員の場合にはお勤め先(所属庁))への申請手続きが必要です。ただし、本年3月まで児童手当を受給されていた方については、新たに子ども手当の対象となる子ども(原則として中学生2年生と中学3年生)がいない場合は、申請が免除されており、新たな申請手続きを行わなくとも、子ども手当の支給を受けることができます。」と解説されており、夫Aが児童手当を受給している場合、原則として夫Aが児童手当の消滅に代わり自動的に子ども手当受給権者になるようです。別居中であっても市町村では原則として夫Aを受給権者とみなすようです。

○この場合、妻Bとしては自分が子供3人を監護しているのだから、自分が受給権者と主張したいと思われます。AB間で妻を受給権者と合意した場合は、夫Aが「子ども手当て受給事由消滅届」を提出し、妻Bが子ども手当支給の申請手続をすることで妻Bが受給資格者と認定されます。