子供は離れて愛おしくなるもの−人情として自然では
○夫婦関係が破綻し、妻が子供を連れて夫と別居し、夫婦で子供の親権或いは面接交渉を巡って揉めているケースでは、妻は殆どの方が訴えることがあります。それは、夫は一緒に生活している時には、子供には関心を示さずほったらかしにしていた、それなのに、いざ離婚となったら、突然、子供、子供と騒ぎだし、親権を寄越せ、頻繁に面接交渉をさせろと主張し始めて困っているというものです。
○この場合の妻は、今になって子供、子供と騒ぐ夫は子供に対し真剣な愛情などあるはずがない、親権は当然妻が取るとしても、あんな夫には子供との面接交渉もさせたくない、実際、子供もあんな父親に会いたくないと言っているし子供にとっても迷惑です、何とか夫に面接交渉を認めないようにして欲しいと強く主張します。
○これまでの実務経験では、夫が妻は兎も角、子供に対しては大変優しく子煩悩で、本気で子供とは別れたくないと思っていると妻も評価している例はありますが、どちらかというと少数派で、妻の評価は、これまでは子供をほったらかしにしていながら、いざ離婚となって初めて子供、子供と騒ぎ出すと言う例が多いようです。
○詳しく事情を聞くと、この場合の夫は、子供、子供と騒いでいるけれども、実は子供ではなく母親つまり自分の妻に未練があり、妻と離れたくないばかりに、いわば子供をダシにして妻とのやり直しを求めるために親権或いは面接交渉に拘る例が多いように思えます。また妻に対する怨み・つらみが強く、何としても妻の思い通りにはしたくないと、妻に対する嫌がらせで子供をダシにして親権或いは面接交渉に拘る例もあります。
○しかし私はこのように訴える妻に対しては、例えどのような意図が隠されていようと、父親として子供に会いたいと思う心が生じたことは尊重すべきではないでしょうかとアドバイスします。今まで全くほったらかしにしていながら、離婚する今になって子供に会いたいというのは到底許せないと言う妻に対しては、別れることが決まって子供に対する愛情を自覚するのは、人情として誠に自然とも付け加えます。
○なかには離婚に当たっても子供なんかどうでも良い、面接交渉なんて一切求めないと言う冷たい父も居ますが、実の父親にそのような態度を取られる子供の気持ちはどうでしょうか。子供としては、お前なんかどうでも良いと言われるより、お前にこれからも会いたいと言われる方が余程嬉しいのではないでしょうかとも伝えます。
○これに対し母は、いや、子供だってあんな父親に会いたくないと言い張っていますと、言葉を返します。それに対しては、その子供の言葉を真に受けてはいけません、それは母の父に対する憎悪を感じ取り母に気遣って言ってる可能性があります、何とか、父と母のの争いに子供を巻き込まないとの姿勢を持てないでしょうか、父と母は別れても父と子の絆は永久に続くのですとアドバイスします。しかし、夫憎しに固まっている母の姿勢が変わることは殆どなく、弁護士は辛い立場になります。