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「離婚原因の婚姻を継続しがたい重大な事由認定には先ず別居」で「
訴訟で婚姻破綻による離婚を認めて貰うには、最終的には別居が必要であり、相当期間の別居の継続があれば、客観的婚姻破綻が推定」されますと述べました。
○これに対し離婚を拒む被告側で、婚姻破綻に至った原因は全て原告側にあり、被告には責任がないから婚姻破綻とは評価できないと言う主張が可能でしょうか。弁護士が被告代理人になっていながらこのような答弁書が提出されることが多いとのことです。
○これについては婚姻が破綻したかどうかの認定が客観的に行われるとすれば、婚姻破綻と有責性は全く別物であると捉えるのが離婚訴訟実務の原則のようです。即ち
婚姻破綻の有無は相手方の有責性とは無関係であると言うのが原則とのことで、この考えの先例が後記の最高裁判例です。
○私自身も、家庭学校論・夫婦戦場論の立場から家族夫婦関係の実質は積極的破綻主義にならざるを得ず、また積極的破綻主義を自覚した方が家族夫婦関係維持のためになると確信していますが、過去の裁判例はこの点全く中途半端なものが多い即ち有責主義を引きずっているものが多いとの感想を持っています。
○婚姻破綻の有無は相手方の有責性とは関係についての裁判例を検討していきますが、先ずは無関係の先例と言われる最高裁判例を紹介します。
昭和33年12月25日離婚請求事件最高裁判決(家月11巻3号105頁)
要旨
@民法770条1項5号にいう「婚姻を継続し難い重大な事由」と当事者の有責
A民法770条5号にいわゆる「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、同条1、2号のように必ずしも夫婦の一方の責に帰すべき事由であることを要しない。従つて、夫婦いずれの責にも帰すべからざる場合、又は、夫婦双方の責に帰すべき場合もまたこれに包含されること勿論であつて、原判決には所論の違法は認められない。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士青野実雄の上告理由第一点について。
民法七七〇条五号にいわゆる「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、同条一、二号のように必ずしも夫婦の一方の責に帰すべき事由であることを要しない。従つて、夫婦いずれの責にも帰すべからざる場合、又は、夫婦双方の責に帰すべき場合もまたこれに包含されること勿論であつて、原判決には所論の違法は認められない。それ故、論旨は採るを得ない。
同第二点について。
控訴人が実家に帰つた原因が原判示認定のとおりであること、並びに、上告人の頑な性格を強め事毎に冷淡な心情を示すに至つた原因が原判示認定のとおりであつたことは、原判決挙示の証拠で肯認できるから、原判決には所論(一)のような違法は認められない。また、原判決は、挙示の証拠で原判示事実を認定した上、以上認定に反する挙示の各証言と当事者双方本人尋問の結果は信用し難く、他に右認定を覆し前記調停が無効であるとかその他控訴人主張事実を認むべき資料はないと判示しており、その判示は、原審の証拠関係に照しこれを肯認することができるのである。されば、原判決にはその余の所論のような違法も認められない(従つて、所論(五)の違憲の主張はその前提を欠くものである)。本論旨もすべて採るを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)