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「夫と42年間不貞関係を継続した女性への損害賠償請求例2」で5000万円の請求に対し300万円を認めた東京地裁平成15年8月29日平成13年(ワ)第27193号判決判示全文を掲載しました。不倫問題について重要な示唆に富んだ判決だったからです。以下、私なりに事案を解説します。
○最初の感想は昭和34年(1959年)から平成13年(2001年)に自ら告白するまでの42年間の長きに渡りよくぞ妻Xに知られることなく夫Cと愛人Yの関係が続けられたものだということです。Cは昭和58年に定年退職していますので、この定年時60歳とすると大正13年生まれで、昭和34年36歳の時から平成13年80歳まで関係が続き、平成12年79歳までは肉体関係もあったことになり正に驚異です。
○しかもCは都庁職員ですからそれほど収入があるとは思えないところ、Yと関係を続けた42年間に退職金内金1000万円を含めて3000万円以上の大金をYに交付しているにも拘わらず、妻Xに感づかれなかったのも驚異の一言です。さらに昭和41年C43歳からはYの測量図作成等の会社を手伝い土日はY宅で過ごし、昭和50年C52歳頃からは月に3,4回はY宅マンションを訪れ泊まっていたとのことでYはCのお妾さんと評価される状況になっていたにも拘わらずXに完全には気づかれなかったことも正にアンビリーバブルです。
○さらに驚いたのはCが80歳になった時点でXに対しYとの関係を全て告白したことです。正常な判断力があればこんな馬鹿なことはしないはずで、Cは半ば痴呆症にでもなって正常な判断力が失われたしまったとしか思えません。42年間も隠し通してきたのですから、墓場まで隠して行くべきでした。
○当事務所でも相当件数の不倫に関する事件を扱っていますが、これほど長きに渡って不倫関係が正妻に知れずに継続してきた案件には当たったことがありません。事実は小説より奇なりと言われますが、弁護士をやっているとホントに実感するもので、この事案も小説より奇なりと評価できるでしょう。尤も私が知らないだけで世間では結構ある例なのかも知れませんが。
○間男・間女?無責任説を採る私でもこの事案、原告Xが余りに気の毒で、Yが全く無責任と断定しかねます。勿論一番責任が重いのはCに決まっていますが、ここまで至るまでに何某かのケジメをつけるか、ケジメがつけられないのであれば、最後まで秘密を通してXに知らせずXに要らぬ精神的苦痛を被らせないよう細心の配慮をすべきでした。
○YはCから3000万円を超える大金を受け取っていることもあり、Cがおそらくは痴呆症かかってきて判断能力が低下しYとの関係を全て告白する大失態を演じてXに多大な精神的苦痛を与えたことについてYも責任を取るべきと思われますがその金額が問題です。もし私がXから依頼された場合は必ず最も責任の重いCに対し訴えを提起しCとの連帯責任と言うことでYを訴えます。本件では余計な告白をした平成13年からXとCは別居し、CはYと同居しているから尚更です。
Cも一緒に訴えればもっと大きな金額が勝ち取れたような気がするのですが。