本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

不倫問題

夫がかまってくれない寂しさでの不倫−夫婦間の消滅時効

○平成20年1月7日は当事務所仕事始めです。今年も相変わらず多重債務相談と男女問題相談の申込みが多いようです。平成19年5月に記載した「夫がかまってくれない寂しさでの不倫のつけ」について私も考え方を述べておりませんでしたので、何回かに分けて記載していきます。

○先ず結論から言うと私は、妻Aさんに対し、そのような態度の夫Bさんとは、今後やり直すことはおよそ不可能であり、Bさんとは離婚して新たな人生を歩むことを考えた方がAさんのためですと、アドバイスをしました。

○この事案の問題点は先ず以下の通り、10年以上前の不倫という点です。
・妻A(現在50歳)は、夫B(現在55歳)が単身赴任を長く続け、顔を合わせる機会が少ない上に、たまに帰ってきても2人の子供の子育ての厳しさ・苦労などについて優しくいたわってくれることがなく、そのような夫に不満を抱き、たまたま優しくしてくれた職場の妻帯者の同僚C(現在45歳)が好きになり、不倫関係を2年ほど継続して、お互いに家庭を壊したくないとのことで10年前に別れたが、今でも時々メールの遣り取りをして近況などを報告し合っていた。

○Aさんが、Bさんと婚姻中にCさんと男女関係を持つことは、婚姻によって夫婦間に生ずる貞操義務に違反し、講学上AさんとCさんが共同でBさんの夫たる地位を侵害する共同不法行為に該当し、それによってBさんに生じた精神的苦痛について慰謝料請求権を有すると説明されるのが一般です。

○私自身は、AB夫妻の婚姻という一種の契約関係についてAさんに債務不履行責任が生じるが、Cさんには優越的地位を利用して関係を迫った等の特別の悪質性が無い限りは、Aさんに対し不法行為責任は生じないと言う現在の多くの学説の見解に賛成であることは、「間男・間女?の責任に関する最近の学説概観」等で繰り返し述べてきたとおりです。

○ところで10年以上前の不倫であれば既に時効消滅しているのではと思われる方も居るでしょう。しかし不法行為による損害賠償請求権の期間の制限を定める民法第724条は「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」となっており、本件では損害及び加害者を知ってから3年経ってなくまた20年も経過していないので消滅時効にはなりません。

○それでは仮にAさんとCさんの関係についてBさんが3年以上前に知っていた場合であれば時効消滅するかと言うと、この場合も夫Bさんの妻Aさんに対する損害賠償請求権は時効消滅しません。夫婦間の権利の時効の停止を定める民法第159条は「夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」となっているからです。この規定は法律専門家でも見落としがちな意外な盲点になっておりますので注意が必要です。