○「
『片親引き離し症候群』を紹介されました」で、「
離婚までの父母の紛争が尾を引き、離婚後、子を引き取った側が面接交渉を拒否し、家事審判に至る例も増えており、社会問題になっている」との報告をしましたが、今回は、親と子の面接交渉の実施にあたり、第3者である民間団体が主催するグループの専門家を立ち会わせることを命じた審判例(東京家審平成18年7月31日家月59巻3号73頁)を紹介します。
○夫A妻B夫婦の別居期間中に子供C(10歳)の面接交渉について合意したものの、その後、AB間に面接交渉を巡って紛争が生じました。調査官の調査中、Cは同居するBの脇から離れることなくBに素直に甘えを表現し慰みを求めて心の拠り所とする一方、AB間の争いには生々しい記憶が残り、AB間に再び争いが起きないか不安を感じている様子であったとのことです。
○AB間では共に相手方の暴力を主張し、更にAはBに対し、Cとの会話について禁止事項を設けないこと、宿泊を伴う旅行を半年に1回実施すること、Cの学級担当者との面談を定期的に実施し、その内容をAに知らせること、Cの通知簿全部のコピーを交付し、学校行事や配布物、塾のカリキュラムや内容、頻度を伝えることを求めたとのことです。
○この夫Aは自分自身では、子Cに対する強い愛情の発露として上記のような細かい要求をしていると確信していたのでしょうが、相手方にしてみればこんな細かいことを要求されたら辟易として益々Aが疎ましくて仕方なくなると思われます。
○私自身も、長女とは生後1年で離れ、月に1回程度の面会を続けた経験がありますが、ただただ長女の元気な顔を見れば十分であり、長女の小学校時代は学校の成績を気に病むこともなく、担任の先生との懇談内容或いは通知簿全部の内容を知りたいなどとは思わず、まして学校行事や配布物、塾のカリキュラムなど全く関心外でした。
○失礼ながらこの夫Aは、一本気で思いこんだら一筋で、視野が甚だ狭い方と見受けました。子Cにしてもこんな父親では面会などしたくないと思うのではと推測したところ、案の定、妻B代理人弁護士の報告では、子Cは、父Aとの面会はどちらかの代理人が立ち会いしなければ「絶対に行きたくない」と述べ、更に宿泊を伴う面会はCが拒否して実現出来ないままだとのことでした。
○妻Bは、面会は認めるがその面会の条件として、Cが返答に窮する質問は避けること、学校等の情報を現段階で開示することは困難であること、面会に当たっては社団法人○○の利用を前提とすることを主張しましたが、この父では、これらの条件提示は当然と思われます。
この争いについての判示は次回ご紹介します。