祖父の孫娘に対する性的虐待の損害賠償義務1
○久しぶりの判例紹介で、判例時報平成18年7月11号62頁以下に掲載された「祖父が孫娘に対して長年にわたり性的虐待を加えたことにより、孫娘が外傷後ストレス障害等に罹患したと認め、後遺障害による逸失利益等の損害が認められた例」です。
○事案概要は次の通りです。
X(昭和55年生)は、昭和63年両親離婚後、平成4年8月(X小学6年12歳児)から平成10年9月まで産婦人科医院を経営する父A方祖父Y(大正14年生当時67歳)宅に居住していた。
Yは平成4年秋頃からXと添い寝するようになり、同年10月頃から、Xの胸や性器を触るようになり、「このことは誰にも言うな。誰かに言ったら僕は首をつって自殺しなければならないから。」と脅しながら、週3,4回は添い寝に来てはわいせつ行為を繰り返し、同年12月にはXの性器にYの陰茎を挿入するようになった。
中学生になって姦淫行為の意味が判ったXはYにどうしてこんなことをするのか尋ねるとYは「おばあちゃんとはできないから」と答え、生理が始まり妊娠の不安を訴えると「僕はタネを全部取っているから絶対に子供は出来ない」と答えて、Xが成長するにつれ、「病院には劇薬がある。誰かに言ったらお前を殺して僕も死ぬ。」と脅迫を強めてXへの姦淫行為を継続し、Xが高校に入るとその交友関係にも口出しするようになった。
Xは平成10年Y宅を出て平成11年から実母と同居したが、Yの妻からY宅に来るよう求められ弟と一緒に2か月に1回位Y宅を訪問した。XはYと2人だけになるとYからわいせつ行為や姦淫行為を繰り返されることが平成12年まで続いた。
このように8年間にわたりXはYからわいせつ行為や強姦行為をされたが、Yの誰かに言ったら死ぬと言う脅しも継続され、恥ずかしくて誰にも打ち明けられず又打ち明けてもYが医師として信頼されており自分の言い分は信用して貰えないと考え、この8年間は誰にも打ち明けなかった。
Xは平成9年頃から胃の調子が悪くなり、同年10月には吐き気、めまい、突然の意識障害等で学校を休むことが増え、高校卒業後の平成11年には胃痛、吐き気、血便等で胃潰瘍と診断され、同年3月には精神不安定となり精神科で精神安定剤を投与されるようになった。
平成13年に上京し、Bと知り合い同棲するようになったが、同年7月から過呼吸症状が出て対人恐怖のため引きこもりとなり同年10月にはうつ病と診断され、その後症状が悪化し、自傷行為に及ぶようになり、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律33条の医療保護入院するまでになり、知覚麻痺、幻覚、パニック発作、自傷行為等が続き治療を継続した。しかし回復せず平成15年4月等級2級の精神障害者に認定され、同年6月にはYから受けた性的虐待に起因する最重症レベルPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された。
○この紹介文を書くため判決文をじっくり読みましたが、胸が締め付けられました。これが事実とすればY医師は正に人の顔をした獣ですが、訴えを提起されたYは事実無根と激しく争い、自分の息子でXの実父であるAに金目当て訴訟との陳述書まで作らせました。