セクハラ責任−セクハラ名下の脅迫?
<事例>
Aさん(45歳)はある大学の助教授ですが、スポーツマンで見てくれも良く学生に人気があり、近づいてくる学生も相当居ましたが、妻子があり真面目なAさんは、40歳までは学生と特別な関係になることはありませんでした。
ところが5年前、Aさんの研究室に入った大学院生Bさんの今時の学生に珍しい清楚でしとやかな態度に惹かれ、BさんもAさんのカッコ良さに惹かれ、2人はお茶や食事を一緒にするなど私的な交際を始め、3ヶ月後には男女関係になりました。
BさんはAさんの指導の元修士課程を経て博士課程に進みましたが、Aさんとの男女関係も継続し、3年目に入った当たりから、就職先等に不安を感じたBさんからAさんに奥さんと別れて自分と結婚して欲しいとの要求をされるようになりました。
Aさんは奥さんと別れる気は全くありませんでしたが、Bさんには曖昧な返事をして関係だけを継続しました。
関係5年目に入り、Aさんの煮え切らない態度に業を煮やしたBさんは、Aさんに対し、奥さんと別れて結婚してくれないなら、これまでの関係を大学に暴露して、これまでの関係を指導者として無理矢理関係を迫られたセクハラだと訴える、それが嫌なら1000万円支払えと脅迫してきました。
この場合Aさんは1000万円支払うべきでしょうか。
<回答例>
これも当事務所での実際相談例を色々組み合わせてアレンジしたものですが、大学内に限らず似たような事例はゴロゴロしているような気がします。
これも人によっては相当回答例が別れる事案かも知れませんが、私は、Aさんのような方には、その対処ミスを厳しく指摘して、出来る限りBさんの要求に応じて裁判沙汰にまでしない方がよいとアドバイスします。
Aさんの対処ミスの重要ポイントは3点あります。
第1点は、大学院生Bさんの「今時の学生に珍しい清楚でしとやかな態度」です。このようなタイプの女性は、真面目で本気になる可能性が強いことを見抜かなかったことです。ドライで平気で身体の関係も含めて複数男性と交際するような女性であれば、Aさんとの関係も深入りすることもなく、又結婚を望むまでに至らない場合も多いでしょうが、Bさんのような女性は、本気になって結婚を望まれる可能性は大いにあります。
Aさんは、結婚まで責任を取るつもりが無い場合、本気になりそうな女性に手を出すべきではありませんでした。
第2点は、結婚する気もないのにそれをハッキリ告げず返事を曖昧にして1年間も関係を継続したことです。
Aさんは、Bさんと結婚する気がない場合、Bさんが結婚を望んだ時点でハッキリ拒否して、出来る限りの誠意を尽くすべきでした。
この時点での最大の誠意は結婚できないこと即ち妻子と別れるつもりはないことををハッキリ告げ、先ず身体の関係はキッパリ断つことでした。その他の出来る限りの誠意とはお金の支払を含め就職先斡旋等Bさんの将来の生活の道筋を付ける最大限の努力をすべきでした。
第3点は、これが最も大きなAさんの責任ですが、AさんがBさんの指導教官であったことです。
このような事例は職場の上司と部下等でゴロゴロしているような気がしますが、職場の同僚の場合と大学教官と学生の場合は責任の程度はまるで違うと考えるべきでしょう。大学の場合、学生はいわばお客様であり、世に出して社会の一員として生活できるようになるまで指導する責任があります。
そのお客様を脅迫まがいの言動をするまで追い込んだ責任は誠に重大です。教育者たる者、この責任の重大さを肝に銘じるべきです。
結論としてAさんは、Bさんの望みを適える最大限の努力をすべきと思います。仮にAさんがホントにBさんが好きでBさんと結婚したいと思っているのであれば奥さんに多額の慰謝料を支払う等の誠意を尽くして別れてBさんと結婚すべきでしょう。
しかしそこまでの気持ちがないなら曖昧な態度はキッパリ止めて結婚できないことをハッキリ告げ、出来る限りBさんの望む金額支払いの努力をすべきでしょう。
で、1000万円という金額の妥当性ですが、私はちと高すぎるという気もしますが、セクハラ訴訟回避料としてはやむを得ないかと思います。セクハラ訴訟になった場合、Aさんは、公開の法廷で、あること無いこと言われてサンドバックのように叩かれ、大学教官の地位を失う結果になる可能性が極めて高いからです。