○不倫で慰謝料請求を受けている方で、当事務所での相談をご希望される場合、
男女問題不貞慰謝料請求用受付簿PDFファイル(全3頁)をダウンロードして印刷し、所定事項にご記入してご持参頂くければ幸いです。
※この受付簿には、差し支えない範囲のご記入で結構です。
無し,有りのいずれかを○で囲み,所定事項ご記入下さい。
( )内の参考書類は持参してきた場合チェックを入れて下さい。
○以下、不貞問題の典型的事例での基本的な法律関係をご説明します。
<事案>
当社のA課長(妻B女あり結婚歴15年、45歳)が、5年前から同じ課の部下の独身のP女(30才)と男女関係(2度中絶)になっていました。
Aは、P女に対し、いつか、妻B女と別れて、結婚すると約束していたのに、最近、妻B女の知るところとなり、Aの家庭がゴタゴタし、AはP女を避けるようになり、ついには別れを求めています。
P女としてはどうしても納得できず、社長の私にAと結婚できるよう何とかしてくれと泣き付いてきました。P女はAに結婚を求めることが出来ますか?
又もし結婚出来ないとしたらPはAに対し慰謝料請求が出来るでしょうか。
出来るとしたらその金額はどのくらいでしょうか。
ところがPがAに対して慰謝料請求をしていると聞いたAの妻Bは激怒して、Pに対し妻の地位を侵害されたとして慰謝料請求をしました。
このBのPに対する慰謝料請求は認められるでしょうか。
<回答例>
これは、最近、日常茶飯事的に相談を受ける不倫の法律関係についての設例です。
1.PはAに対して結婚を求めることが出来るか
答えは言うまでもなく、ノーです。
先ずAとPの関係ですが、「妻B女と別れて、結婚すると約束」は有効かと言う問題があります。これは一般論としては、無効です。その理由は、法律的には、公序良俗違反と説明されています。堅苦しく言うと人倫に反する約束だからです。人倫とは人の道です。人の道に反する約束に対し、国は保護を与えてくれないのです。ですからAとPとの間に婚約関係は認められません。
次に仮にPが独身で自由な身であった場合、PはAに結婚を求める権利があるでしょうか。
これも言うまでもなくノーです。PとAとの間に婚姻予約関係が成立していたとしてもノーです。Pが結婚の約束を反故にした場合、PはAに対し、婚約破棄の慰謝料の項で述べたとおり、精神的苦痛に対する慰謝料請求が出来るだけで、結婚自体の強制は出来ません。
2.PのAに対する慰謝料請求は認められるか。
これは一概にノーとは言い切れません。しかし、前述の通り、このケースではPとAとの間に婚約関係は認められません。解説書では、単なる私通関係でPはAに対し何らの請求が出来ないとの回答例もあります。
しかし、具体的にはAのPに対する言動、PがAとの関係で被った損害、例えば妊娠中絶を多数繰り返した等の事情があると慰謝料が認められる場合もありますが、その金額はAが独身で婚約関係が成立した場合に比較して相当低くなります。
3.Aの妻BのPに対する慰謝料請求は認められるか。
結婚によって夫婦は、お互いに貞操義務を負います。貞操義務とは、具体的に言うと婚姻関係継続中は、お互い相手方としか性行為をしませんよと言う約束です。お互い相手方としか性行為が出来ないと言うことは、更に言うとお互い相手方を独占して使用する権利があるとも言えます。
するとBはAを独占して使用する権利があり、PがAと性関係を持つことはBの独占使用権を侵害したことになります。この独占使用権を侵害されたことによる精神的苦痛についてBはPに対し慰謝料請求が出来るとされています。又A自身もBに対する貞操義務を守らなかったことによるBの精神的苦痛について慰謝料支払義務が発生すると一般に解説され、講学上、AとPはBに対して共同不法行為責任を負うと説明されています。
4.不倫の慰謝料請求についての最近の傾向
以上が一般的な説明例ですが、最近はBのPに対する慰謝料請求については裁判例は、制限的になってきています。
先ずAB夫婦間が事実上破綻していた場合は、貞操義務もなくなり、独占使用権侵害にはならないと言う最高裁判例が出ています。又BがAの不貞行為を事実上許している場合、不貞の相手方の責任は副次的であるとして請求金額を大幅に減額した地裁レベル判例もあり、特に若い裁判官は、BがAとの結婚を維持したままPに慰謝料請求しても請求額は大幅に制限される傾向になってきています。
不倫の法律関係は、鶴亀通信第6号
「補足解説」でも詳しく述べていますが、世界的潮流である約束違反説の立場では、Bは約束を破ったAに対しては請求できますが、何の約束もしていないPに対しては原則として慰謝料請求が出来ません。
若い裁判官はこの約束違反説的立場に立つ方が増えつつあるように見えます。
5.不倫大流行で驚いた話
ここ数年、ネット、携帯電話の普及による出会い系サイト激増に象徴される情報網の劇的な発展により、男女の出会いチャンスが増え、不倫が激増しているものと思われます。不倫発覚のきっかけも殆どが携帯メールです。
中には妻と夫が共に同じ出会い系サイトにハンドルネームで登録してデートの約束をして、約束の場所に行ったら夫婦が出くわし、お互い、出会い系サイトを利用するとはけしからんと、非難し合う漫画みたいな事例もありました。
結婚によって課された貞操義務を生涯守ることは人間の本性、更に近時の情報網劇的発展による出会いのチャンスの激増により極めて困難な時代になっています。
結婚生活を維持したい場合、先ず夫婦相互がお互いに相手に尽くし、不倫の一つや二つしても文句が言えないほどに相手を心身共に満足させていなければ不倫の資格はなく、相手を放置して自分だけ不倫に及んだ場合は、誠意を持った相応の償いをしてサッサと離婚すべきと特に浮気性の男性相談者には偉そうに説いております。