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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

東京家庭裁判所講演録

ある女性依頼者の示談に至るまで

ある女性から、離婚した前夫に500万円の損害賠償請求を依頼された事件があります。損害賠償の理由は、結婚生活をしていたとき、受けた暴行傷害についての慰謝料等です。結婚生活中、性的虐待を受け性器に傷が残ったこと、更に殴る蹴るの暴行を受け、それを避けるために窓から飛び降りた時、腰を打って、慢性的腰痛後遺障害が残り、歩行が不自由になったと言います。

確かに歩行する様子を見ると確かにびっこをひいています。しかし、腰痛治療に通った医師の診断書には、完治したと記載され、後遺障害の記述がありません。本人は医者がちゃんと書いてくれないと不満を述べています。
証拠上極めて厳しい事件でしたが、男女関係がらみの事件ですの、家庭裁判所に損害賠償調停を申立てしました。調停に出てきた前夫は、案の定、猛烈に反論してきました。

先ず性的虐待などしたことはなく、確かに性行為の時に器具を使用したことがあるが、全て合意の上であり、又殴る蹴るの暴行を加えたことなど全くない、確かに口喧嘩をしたときに女性が、窓から飛び降りたことはあるが、そのまま走って実家に戻った、窓から飛び降りたのは自分のせいではなく、例え腰を打ったとしても自分には関係がない、更に仮に後遺障害が残る程腰を打ったら走って戻れるはずがないと言います。

どう見ても前夫の言い分の方が筋が通っており、女性の説明がしどろもどろであることもあり、調停委員は、私に、先生、この事案は、到底損害賠償など認められないのではないですかと冷たく言い放ちます。しかし女性はどうしても少なくとも300万円は取りたいと言って聞かずほとほと困りました。やむを得ず調停不調として、訴えを出すことにしました。

ところが、前夫が、話を聞いて欲しいと事務所を訪ねてきました。自分の主張を繰り返し、何とか裁判は出さないで欲しいと懇請します。女性にある程度のお金を出さなければ裁判は出しますと言うと、渋々50万円出すと言い、最終的には70万円まで出しても良いとなりました。

家庭裁判所での状況を私から聞いた母親は、訴えを出しても取れるかどうか不明なので70万円でまとめて欲しいと言うことになりました。肝心の女性本人は、到底納得できないと言う雰囲気でしたが、母親は、兎に角、男の気の変わらない内にまとめて欲しいと、示談契約書を交わし、70万円を受領しました。